■ 小田原―湯河原地区 農道整備事業
 先日行った小田原市内の最後の視察先は、「小田原ー湯河原地区」の広域営農団地農道整備事業の現場です。海沿いの国道135線は、いつも渋滞ですが、それよりも山側に平行に通る道ですので、災害時などにも代替道路として役に立つと考えられます。また、事業の名前のとおり、農産物の生産、輸送(農業振興)のみならず、地域生活の改善と安全を確保するための整備が目的です。まだ、一部国の動きが遅く許可がおりていない個所もあり、今後の課題もみられます。
 工事の概要は、小田原市入生田の早川に架かる太閤橋右岸を起点とし、早川、石橋、米神、根府川、江之浦を経て真鶴町岩、湯河原町吉浜を南下、鍛冶屋地内の町道幕阿山公園通りを終点とし、延長は16.9Km(広域農道13.4Km、関連工区3.5Km)を予定しているそうです。費用負担は、国が50%、県が39%、市町が11%という配分です。総事業費は192億円で、平成8年から着手されています。高額な事業ですので完成に向けて、民間の力も使って都市からの観光客の呼び込みなど、より有効な活用を考えていくべきと考えています。
 この現場の視察の後は、近くで、江戸城の城の石垣に切り出されたという「石丁場」が発見されたということで見てまいりました(小田原市:早川石丁場群)。江戸時代、ここから切り出された岩石は、荷台と牛で石曳き道を下り、早川という「川」の水流をイカダのようなものを使って運搬され、さらにその後、相模湾から東京湾へ石舟によって海上運搬されていたようです。

 午後は、三浦市に移動し、東京大学大学院の理学系研究科付属臨海実験所に視察に行きました。
この研究所は、世界的にも稀な豊かな生物相を有するこの地を動物学研究の拠点とするため1886年(明治19年)にわが国最初の、世界でも最も歴史の古い臨海実験所の一つとして設立されました。日本の動物学・海洋生命科学の研究・教育の中心として活動しており、現在もその立地条件を生かし、主に海産無脊椎動物を用いて、発生生物学、細胞生物学、分子生物学、動物分類学など、幅広い研究活動を行っているそうです。
 現在在籍している6人の教員個々の研究は多岐にわたり、進化発生生物学・ゲノム生物学・再生機構、受精の分子機構、系統分類、内分泌・生理の進化等の研究を行っているとのことです。わが国における生物学の発展に大いに貢献をしており、世界的にも、ウッズホール(米)・ナポリ(伊)・プリマス(英)の各実験所と共に海産動物研究の歴史に大きな足跡を残しています。お話をお聞きするだけでも大変興味深く感じられました。このような基礎研究はなかなか民間ではできません。国の財政再建は必須ですが、こういった研究機関への予算の確保は必要だと考えます。

■ 小田原漁港海岸環境整備事業
 小田原市内の漁港の事務所を後にして、車で少し離れた場所にある整備工事中の防波堤まで視察に行きました。海岸保全は多岐にわたり、安全性を高め、海域環境の向上を目指して進められております。
 御幸の浜周辺の海岸では、昭和23年からの40年間で約20mにもおよび海岸線が後退しました。小田原海岸の特徴は、海底地形が急こう配の砂礫海岸です。このため、海浜の砂は沖に移動すると斜面下の深いところに落ち込みやすいそうです。さらに、波打ち際近くの水深の浅い海が狭いため、沖から来る波は波の高さが低くならないまま打ち寄せやすい海岸とのことです。海岸背後には、西湘バイパスが走っており、その背後には家屋が密集しています。災害などを想定しながら、防護・環境・利用(漁業やリクリエーション)の主な3本の柱に沿って「小田原漁港海岸環境整備事業」が平成元年より着手されました。

午後からは小田原漁港特定漁港漁場整備事業の説明、小田原漁港海岸環境整備事業に関する視察、小田原―湯河原地区農道整備事業に関する視察を行いました。

■ 小田原漁港特定漁港漁場整備事業
まずは神奈川県西部漁港事務所に行き、各説明をしていただきました。かつての小田原漁業は古くから定置網漁業が盛んで、特に「ブリ」の漁獲量はたいへんなものでした。しかし、近年は漁獲量の約7割がアジ、サバ等の多獲性魚であるため好不漁の波を受け、安定的な供給が困難な状況にあります。そこで地場で獲れた魚や県外の魚をストックすることのできる畜養水面を確保することにより、安定供給を可能にします。そして、畜養された魚は陸揚げ、加工、直販、輸送までの一連の作業を効率的に行える施設を整備し、県西地域の水産物生産、流通拠点としての発展を図るというものです。防災拠点、漁船避難拠点、都市との交流拠点、生産流通加工拠点、環境創造型事業の5つの機能をもち、H14年度に始められたこの事業はH26年度の完成を目指します。
左の写真は相模湾の定置網漁業について、実際に模型を使用してレクチャーして頂いているところです。相模湾は黒潮の影響を受け、世界でも有数の豊かな海です。相模湾には1600種以上の魚が生息しているとのことです。ただし、定置網は人出もかかり、海流の早い場所では定置網の負担も大きいため、こちらの水産技術センター研究、改良が加えられてきたとのことです。

 要望の多くは道路に関する要望の他に、防災、教育に関する要望も多く出されました。道路に関しては、海沿いの国道135号の渋滞解消に関する要望が各市町村から出されました。
その他では、真鶴町からは、無電線化と県内産石材の活用について要望が出されました。貴船まつりの舞台でもある真鶴町は景観形成をブランドとしており、観光促進のため無電線化を要望しています。観光産業は景気回復、今後の日本の発展には欠かせない産業です。また県内で採れる良質な安山岩の活用については民間の力を含めて知恵を絞っていく必要があると感じます。
小田原市からは、酒匂川の河床が上昇していることから、河床の浚渫の要望が出されました。
この他にも数々の要望が出されました。限られた財政の中、緊急度の高いもの、神奈川の将来の発展に必要なものを中心に精査しながら、財政とのバランスを考えていかなければなりません。

■7月31日(火)

この日は、神奈川県の小田原合同庁舎で、市町村ヒアリングが行われ、真鶴町、小田原市、箱根町、湯河原町の要望をお聞きしました。お越しになられた市町村の長の方は次の方々です。

左の写真は貝リンガルの研究の説明を受けているところです。貝リンガルとは、貝の開閉運動をモニターすることによる海中の環境の変化を感知する装置です。貝の殻に片方にはセンサーを取り付け、もう片方には磁石を取り付けて貝の開閉運動を心電図のようにグラフに表わします。貝からのメッセージということで、バイリンガルにかけて貝リンガルという名前のようです。モノ言わぬ貝ではなくモノ言う貝です。面白いですね。
 この研究が行われたきっかけは、1992年に三重県の志摩半島南部の英虞湾(あごわん)で大きな赤潮が発生して、真珠養殖の貝が大量に死んでしまったことだそうです。真珠養殖の貝が死んでしまったのは、新種のプランクトン『ヘテロカプサ』が原因で、赤潮ですが海が赤くならないのが特徴だそうです。そのため新型赤潮は、赤潮が発生しているという状況が人間の目で見て分からないのです。通常、アコヤガイは海の中では殻を開けて暮らしていて、貝を閉じる回数は1時間に1~2回程度ですが、ヘテロカプサを近づけたアコヤガイの閉じる回数は、1時間に20回以上と極端に増加します。このことを利用して、貝の開閉回数で海の環境を感知し、ヘテロカプサが大量発生したときには、アコヤガイを海から引き揚げるなどして貝を守ることができるのです。最近では新型赤潮の原因のヘテロカプサだけでなく、海の中の酸素が欠乏している状態や硫化水素が発生しているといった異変も貝リンガルで調べる研究が進められています。

 この日は、横須賀の市庁舎にて、横須賀三浦地区の要望をお聞きし、意見交換をしてまいりました。お越しになった市町村の長の方は次の方々です。

 要望の中には「生態系の維持」に関する要望も各市から出されています。右の写真は、先だっての議会で、繁殖し過ぎた特定外来生物等の今後の広域的な対応策について質問したことを話しているところです。日本にもともといない外来種は、年数を追うごとに生態系を乱し、在来の動植物に影響を与え環境を悪化させます。特に、本県では、三浦半島を中心に、ペットとして飼われていたアライグマやタイワンリスが繁殖して、生態系を壊す事態を招いており、さらに今や農作物を荒らす状況にまでなっています。

市町村ヒアリングと現地視察

真鶴町  青木町長、青木企画調整課長、吉田副幹事
湯河原町 冨田町長、高橋総務部長、北村福祉部長
     平澤財政課長、柏木地域政策課長
     二見地域政策副課長
小田原市 加部副市長、時田企画部長、林企画副部長
箱根町  勝俣企画観光部長

   葉山町   山梨嵩仁町長、上妻総務部長、伊藤企画調整課長
   横須賀市  吉田雄人市長、小林財政部長
   逗子市   平井竜一市長、廣末企画課長
   鎌倉市   松尾 崇市長、相川経営企画部長
   三浦市   吉田英男市長、小林理事、加藤政策経営部長、木村政策経営課長

 市町村ヒアリングは、毎年、自民党県議団が行っています各市町村からの要望をお聞きする大切な機会です。
7月20日と30日、31日に行われましたが、私は20日と31日の両日に出席いたしました。市町村ヒアリングでは、道路についての要望も多く出されます。今年度は建設常任委員会の副委員長も務めさせていただいておりますので、しっかりと要望をお聞きして、大変厳しい財政の中、必要性、有効性の度合いと財源とのバランスを考えて予算を付けていかなければなりません。

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2012年7月20日、31日

■7月20日(金)