平成21年  9月 定例会

◎《本会議録-平成21年9定-20090925-026678-諸事項-出席議員等・議事日程-

                9   月

   神 奈 川 県 議 会         会 議 録 第 5 号

                定 例 会

〇平成21年9月25日 午後1時4分開議

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〇本日の出席議員 議長共98

◆《本会議録-平成21年9定-20090925-026681-質問・答弁-内田みほこ議員-一般質問@DV被害者支援についてA児童虐待対策についてB道徳教育の推進についてC医療施設における諸問題について》

〔内田みほこ議員発言の許可を求む〕

〇副議長(舘盛勝弘) 内田みほこさん。

〔内田みほこ議員登壇〕(拍手)

〔副議長退席、議長着席〕

〇内田みほこ議員 私は自由民主党神奈川県議団の一員として、このような機会をいただき、心より感謝しております。

  今回の私の質問は、女性の視点で、DV被害者支援や児童虐待、学校でのいじめ問題など深刻な社会問題についてあえて取り上げます。そして、その根底には、なくてはならない道徳教育の大切さについても、いま一度確認させていただきたいと思います。また、もう一つは、政権交代により未知数ではありますが、全国的に地域医療の再生が急がれる中、地域の実情に合った現場の声を重視した医療施設のあり方や、救急医療体制についても質問したいと思います。しばらくご清聴のほどよろしくお願いいたします。

  質問の第1は、ドメスティック・バイオレンス、いわゆるDV被害者支援についてです。

  まず、DV被害者の自立に向けての支援についてお尋ねいたします。

  配偶者による暴力は犯罪となる行為をも含む人権侵害であり、報道されるものだけでも悲惨な事件が後を絶ちません。私も昨年、知人を通してDV被害相談を2件続けて受け、ふだんは見えにくいけれども、実際は自分の近くでもあることを再認識いたしました。

  県では、配偶者暴力防止法が制定される以前から、被害者の相談や一時保護などを実施し、平成14年4月の配偶者暴力防止法の全面施行を受け、県内2カ所に配偶者暴力相談支援センターを設置して、支援に取り組んでいることは承知いたしております。

  この配偶者暴力相談支援センターで受け付けた相談の件数を見ますと、平成14年度の2,775件から増加を続け、昨年度の平成20年度は過去最高の5,861件となり、約2.1倍にもふえているのが現状です。相談件数がふえている理由には、DVによる被害がふえているという状況もあるかと思いますが、最近ではどのようなことがDVであるか知られるようになり、家庭内の問題なので他人への相談などするものではないと思われていたような場合でも、DVと気づき、相談をするようになってきたことや、相談窓口の充実が功をなしてきていることなどもあると思います。

  実際、私は、県の配偶者暴力相談支援センターを視察させていただきましたが、被害者のプライバシーに配慮し、さまざまな段階の対応ができる体制が組まれており、その成果としての件数の増加もあるのではないかと感じました。

  しかし、警察庁の統計で、警察における配偶者からの暴力相談等の対応件数について、同様に平成14年と20年を比較しますと、1.8倍に増加しており、また、DV法による裁判所の保護命令発令件数も同年比で2.2倍増加していることから、DV被害は深刻な状況にあると言わざるを得ません。

  こうした中、被害者に危険が及ぶことを防ぐため、本人の意思に基づき緊急的に保護を行う一時保護についても、神奈川県では、市町村、警察、民間のDV被害者支援団体との適切な連携により、一時保護を行うという体制が組まれていると聞いております。このように相談体制の充実や適切な一時保護により、配偶者の暴力から被害者を守り、安全を確保する取り組みについては、充実はしてきていると認識していますが、被害者が暴力から逃れられた後に、しっかりと自立をしていくための支援も大変重要であると考えております。

  私が相談を受けた被害者は二人ともそれぞれ働き口を見つけ、今は何とか自立の方向に向かっているところです。

  平成1912月定例会で、私から、一時保護の後のDVの被害者が自立して暮らしていけるようになるまでの住まいであるステップハウスの取り組みなどについて質問をさせていただきました。長い間、配偶者からの暴力を受けた被害者は心身ともに大変傷ついており、すぐに自立に向けて簡単に仕事につけるような状態ではない方も多いと聞いております。私は、こうした外部からわかりにくい家庭内で配偶者から暴力被害を受け、さらにこうした形で愛情を裏切られたという精神的被害はいかばかりかと、同じ女性としていたたまれない思いです。

  さらに、一時保護を受けた後、これまでの生活の基盤を失い、一から生活を築き直さなければならないということは、経済的被害以外の何ものでもありません。そのような中で、時間はかかるかもしれませんが、いずれは自立をしてみずからの力で生きていけるようになる方をふやしていくことが大切であり、心身ともに傷ついた被害者が安心して生活できるようになるため、例えば、それは何とか将来働いていくための被害者の精神的な部分を含めた段階に応じた環境づくりなど、自立に向けてさまざまな支援策が必要であると思います。

  平成19年の質問の際には、今後はステップハウスの増設や施設ごとの特徴を生かした対応を図っていくとのご答弁をいただきましたが、昨年から経済状況の厳しさも影響して、さまざまな課題を抱える被害者が自立した生活を始めるのは、さらに多くの困難を伴うようになっていると考えます。

  そこで、知事にお伺いいたします。

  このようなDV被害者の自立に向けて支援するために、現在ではどのような課題があり、そのことに対してどのような取り組みを行っているのかお伺いします。

  次に、DV問題の周知と予防の取り組みについてお伺いいたします。

  DV対策については、被害者となってしまった方々への支援も重要かと思いますが、被害を最小に食いとめるには、早期の対応や、そもそもDVが起こらないようにするための予防の取り組みも大切であると考えています。相談の件数がふえている理由には、DVそのものの認識が広がったこともありますが、まだまだ被害者の中には、配偶者からの暴力は自分が原因で起きていると考え、DVと認識していない方も多くいらっしゃることをこの間お聞きいたしました。

  配偶者暴力防止法では、配偶者からの暴力を受けている人を発見した場合は、配偶者暴力相談支援センター等にそのことを通報するように定められていますが、そもそも周囲の人がDVであるということに気づかなければ通報にも至らないですし、外出などの行動を制限されるDV被害者は、なかなか相談窓口や支援体制の情報に触れる機会が少なく、悩んでいても相談できないという状況にあります。

  DVの被害者が早く支援を受けられるようにするためには、県民の方々に広くDVについて理解してもらい、周りの人が気づくことにより、支援の仕組みにつなげることができるのではないかと思います。

  また、そもそもDVが起こらないようにするためには、若いうちから暴力は許されないという認識をしっかりと持つようにすることが重要です。昨今では、交際している者の間での暴力、いわゆるデートDVが問題となっていると聞いておりますが、暴力で問題を解決しようと思わないで、互いを思いやる気持ちを持つ習慣を早くから身につけることで、将来の配偶者からの暴力を予防できるのではないかとも考えられます。

  そこで、知事にお伺いいたします。

  DVの問題についての県民への周知にどのように取り組んでいるのか、また、若い世代を対象としたDV予防について、どのように取り組んでいこうとしているのかお伺いいたします。

  質問の第2は、児童虐待対策です。

  DVと同様に一般の家庭内で起こっているもう一つの大きな問題が児童虐待問題です。4日前の全国の児童相談所長会の発表では、昨年4月から6月のたった3カ月間で、18歳未満の子供が、何と8,108人が虐待を受けたということです。うち129人は暴力や衰弱で生命の危機に至っていたということであり、中には性的虐待で妊娠していた例も判明いたしました。

  神奈川県所管域の平成20年度の児童相談所における児童虐待相談受付件数は1,764件で、前年度より326件増加し、対前年比123%と大幅に増加いたしました。その内容を見てみますと、心理的虐待の受付件数が前年度の約2倍の588件となっていますが、これは父母間の配偶者暴力下に子供が置かれることも心理的虐待であるということが浸透したことにより、警察からの通告がふえたことによるものと伺っております。私は、こうした状況からも、DVと児童虐待は密接な関係を持つと考えられます。本来、守り育てていかなくてはならない配偶者や子供を自分のストレスのはけ口にして、大切な愛情をみずから壊し傷つけ、またそれに気づきもしないことが最も深刻なことであると思います。

  最近のことなのですが、私の事務所の外の道から、子供の激しい泣き声とともに過剰にヒステリックな母親の声が聞こえてきました。尋常ではなかったので、私は急いで勝手口から出て後ろから追いかけました。その母親は子供の髪の毛を引っ張りながらずっとどなって歩いているのですが、とても恐ろしく見えました。しかし、残念ながら、そのとき私は母親の前に立ちはだかることができず、次の機会にはお住まいを突きとめなくてはと後悔した次第です。事務所の者に聞くと、いつも泣き声とどなり声が聞こえてくるので、一度、どうしたのと外に出て子供にわざと聞いたときに、しつけなんです、放っておいてくださいと母親にどなり返されたと聞きました。私が見ても、母親は精神的に少し病んでいるかのようにも見えました。

  こうしたことを近くで目の当たりにしましたので、ぜひ、県及び市町村が一丸となり、県民の皆様のお力もかりながら、社会が児童虐待から子供を守っていかなくてはならないと考えております。県民の方々も児童虐待に対する意識が高くなり、児童相談所や市町村等の関係機関との連携もより一層進んできたものと言えますが、児童虐待は今後もふえていくのではないかと予測され、児童虐待が子供の心身に後々まで深刻な影響を及ぼすことを考えますと、未然防止・再発防止の取り組みが非常に重要となります。

  さらに、対象年齢別の件数では、乳幼児が全体の半数近くを占めております。まだしゃべることもままならない乳幼児を虐待すること自体、恐ろしいことです。子育ての難しさが背景にあることがうかがえますが、孤立しがちな保護者は、子育ての相談が思うようにできないことから、子供を執拗にののしったり暴力的になったり、さらには新聞で報道されるような最悪の事態に至る場合もあるのではないかと危惧しております。頼るものが親しかない乳幼児にとって、その大事な時期にどのように親に育てられたかは、その子供の将来にも影響します。余りにもひどい虐待を受けた子供は、精神的ダメージもかなり大きく、健全な体と精神を養うどころか、真の親の愛情に飢えて、すべてに萎縮してしまうのではないか、私はそう思います。

  県では、これまで児童相談所が中心に、市町村の要保護児童対策地域協議会と連携し、児童虐待防止対策に取り組んできましたが、ふえ続ける児童虐待に対し、未然防止・再発防止に向けたさらなる取り組みが求められていると感じます。

  そこで、知事に伺います。

  県の児童虐待に対する現状認識と、今後どのように取り組んでいこうとしているのか、知事のお考えをお聞かせください。

  質問の第3は、道徳教育の推進についてであります。

  今年の8月下旬、名古屋市と静岡県藤枝市で中学生3人が相次いで自殺したのは記憶に新しいところでございます。この事件は、まだ断定はできませんが、いじめとの関連が疑われているということでございます。私は、今日のさまざまな教育課題の中でも、いじめ・不登校が最も深刻な課題ではないかと考えております。また、日々報道される学校裏サイトやネットいじめなどもはびこるなど、こうした悲しい話に接していますと、かつて、先人を敬い、父母、恩師を慕うといった日本人のありふれた人間関係の喪失に一抹の不安を感じざるを得ません。まさにDV問題にしろ、児童虐待問題にしろ、いじめ問題にしろ、人として社会生活を営む中で最も大切な、人を愛する心、慈しむ感情の欠落が最も大きな原因ではないかとすら考えます。

  さて、本県の状況を見てみますと、これまで、いじめ・不登校などの問題については、県教育委員会によりさまざまな取り組みがなされてきたことは承知しております。しかし、残念ながら、本県の不登校児童・生徒数は全国的にも高い数値であり、この課題は一朝一夕には解決できない深刻な問題をはらんでいると言わざるを得ません。

  県の「教育ビジョン」である心ふれあう教育では、「すべての子どもが、人を思いやる心や生命を大切にする心、規範意識や公共心など、豊かな人間性や社会性をはぐくめるよう、体験的な活動の一層の充実を図ります」とありますが、言いかえれば、これは、学校教育における道徳教育の実践ということになるのではないかと私なりにとらえております。

  人を思いやる心や生命を大切にする心をはぐくむことは、学校教育のみならず、社会全体で取り組むべきであると思います。また、規範意識については、子供たちをめぐるさまざまな課題が指摘される中、新しい学習指導要領では、こうしたことを踏まえ、社会生活上の決まりを身につけること、善悪を判断すること、人間として、してはならないことをしないことなど、児童・生徒の発達の段階に応じて具体的な記述が加えられていることを、6月の文教常任委員会で確認いたしました。

  私は、いじめ・不登校などの問題に対して、生徒の心の内面から迫るためにも、学校教育における道徳教育は大変に重要であると考えているのです。今、山積する教育課題の中でも、とかく学力などの課題に目を奪われがちですが、教育の基本に立ち返ってみますと、やはり、人の道を示し、導いていくことが何にも増して、教育が取り組まなければならないことであると思います。

  DV、児童虐待、いじめ等を防止するためにも、人として素直に愛情を感じ与えられるという、いつまでも変わらない人の道というものがあるのではないかと思います。次代を担う子供たちに、このことを正しく教えることこそが、私は道徳教育にほかならないと考えております。

  また、教育する側、校長先生を初め、教職員の方々一人一人の努力と教える側の資質の向上は、これで終わりというものではなく、生徒ともども道徳心についてもっと積極的に考え、推進していくべきだと思います。

  そこで、教育長にお伺いいたします。

  県教育委員会では、現在、いじめ・不登校などの深刻な教育課題に対して、さまざまな取り組みをされていると思いますが、その中で、道徳教育をどのようにとらえ、そして、生かしていこうと考えておられるのか、お考えをお聞かせください。

  私の最後の質問は、医療施設における諸問題についてであります。

  まず、こども医療センターにおける臨床工学技士の配置についてです。

  周産期医療においては、医療の発展により死亡率は確実に減少していますが、その一方で低出生体重児等の増加により、高度な医療管理を必要とするハイリスク新生児に対応するため新生児集中治療室、いわゆるNICUの必要性が高まっているのは知られているところです。

  しかしながら、全国的にNICUは不足状況にあることから恒常的に満床状態にあり、本県でも100名近くの患者を県外に搬送せざるを得ない状況にあるなど、周産期救急患者の受け入れに支障を来していることが大きな課題となっております。

  先日、本県の周産期救急の基幹病院であり、周産期医療の最前線である県立こども医療センターのNICUを再度視察させていただきました。本県では、周産期医療の充実を図るため、平成20年度にこども医療センターのNICUを15床から21床に6床増床したところであり、その際、医師1名と看護師16名を増員し、全国的に医師や看護師が不足している中で、これだけの人員を増員したことは大変評価しているところでございます。

  一方、NICUには、医師や看護師など多くの医療スタッフが必要ではありますが、こども医療センターでは、医療スタッフは当直への対応を含め、昼夜を問わず、慢性的に多忙であるとのことであります。視察において、正規当直医師1名で、夜間、生まれたての赤ちゃんを20人以上診ている状況であると伺い、私は正直言って大変驚きました。また、NICUでは、新生児の呼吸、血液の流れ、栄養の管理など、まさに母親の子宮の機能を人工的に補うため、さまざまな医療機器を使用し適切に医療を提供する必要があることから、医療機器の維持管理は大変重要でありますが、多忙な医師や看護師がその役割を担うことは負担となっていると聞いております。今日、医療機器の進歩は目覚ましく、コンピューター同様であり、医療安全の面からも使用者の専門化が求められている状況であります。

  そこで、病院事業庁長にお伺いいたします。

  こども医療センターのNICUにおいて、患者の医療安全を図るとともにNICUの現場で働く職員の負担を少しでも軽減するために、医療機器の管理については、その専門職である臨床工学技士の配置を近い将来に向けて検討していく必要があると考えますが、県としてはどのように考えているのか、お尋ねいたします。

  最後に、救急医療情報提供体制についてお尋ねいたします。

  救急医療は昼夜の区別なく急病や事故等から県民の命を守る使命を担っています。県は、平成20年3月に策定した「県保健医療計画」に基づき、救急医療を提供するため、初期救急医療から三次救急医療にわたる患者の症状に応じた救急医療体制や、周産期、小児などの特殊救急医療体制の整備を進めてきました。

  こうした医療提供体制を円滑に運用するため、県では、昭和57年に神奈川県救急医療中央情報センターを設け、県医師会に管理運営を委託し、24時間体制で救急医療の応需情報に関し、医療施設と消防本部等をオンラインで結び、患者の搬送に必要な情報提供を行っていると承知しております。

  私は、県救急医療中央情報センターを視察する機会を得ました。当初、第2分庁舎にある災害対策本部のような大きなオペレーションルームをイメージしておりましたが、実際は県総合医療会館の2階の一室にラップトップパソコンが並ぶ、ごく普通の執務室であることに驚きました。しかし、先ほども申しましたとおり、ここで県内の医療機関や消防本部からの問い合わせに対し、24時間365日休みなく搬送先を案内しているのです。ここはまさに救急医療の扉のかなめとなる重要な施設であるのです。しかし、現場では、その人員体制や情報提供の内容にまだ課題があるとも聞いています。

  こうした中、国は、平成21年5月に、救急患者を受け入れる医療機関が速やかに決まらない問題を解消するため、消防法を改正いたしました。その中で、都道府県は、消防機関による傷病者の搬送及び医療機関による傷病者の受け入れの迅速かつ適切な実施を図るための基準を定めることとされ、この実施基準は、都道府県の実情に応じて、全域または医療提供体制の状況を考慮した区域ごとに、傷病者の心身の状況に応じた適切な医療の提供を確保するために、医療機関を分類する基準や消防機関が傷病者の搬送を行おうとする医療機関を選定するための基準などとなっております。

  東京都では平成21年度当初から、医療機関を確保するためのルール、いわゆる東京ルールとして先行して実施しています。

  ルール1は、救急患者の迅速な受け入れのため、都を12の地域に分け、地域ごとに2病院を地域救急センター病院に指定し、地域救急センターは地域内での患者受け入れ調整を行い、みずからも受け入れの努力をするとしています。さらに、地区内での調整が困難な場合のために、都全域の調整を行う救急患者受け入れコーディネーターを配置しています。そして、ルール2では、緊急性の高い患者の生命を守るため、傷病者の緊急性を判断する、いわゆるトリアージを実施していると聞いています。

  こうした都の取り組みの中で私が注目するのは、ルール2のトリアージの実施です。真に救急性の高い患者さんをいち早く第三次救命救急センターにつなげるためには、搬送初期のトリアージが最も重要と考えます。東京都では、例えば脳卒中の疑いの有無に対する救急隊の判断基準を作成していると聞きます。

  福祉医療先進県神奈川ならば、例えば救急医療情報システムを高度化させ、救急隊から傷病者の状態を映像で救命救急センターに送信できるシステムにより、直接救急医師が傷病者の状態を判断できるようにするなど、救急搬送のサポート体制の強化に向けたさまざまな取り組みが必要と考えます。

  しかし、財政負担の問題や、個人情報に対するセキュリティーなど解決すべきハードルは高いことは承知しております。救急医療情報提供体制については、県民が安心して生活を送るために、さらなる充実が必要と考えます。

  そこで、知事にお伺いいたします。

  今後の県救急医療中央情報センターを含めた県の救急医療情報提供体制の充実に向けた取り組みについて、お聞かせください。

  以上で、私の質問を終わります。

  ご清聴ありがとうございました。

〔拍 手〕

〔知事(松沢成文)発言の許可を求む〕

〇議長(国吉一夫) 松沢知事。

〔知事(松沢成文)登壇〕

〇知事(松沢成文) 内田議員のご質問に順次お答えいたします。

  まず、配偶者からの暴力、いわゆるDVの被害者の自立支援に関する課題と取り組みについてのお尋ねをいただきました。

  DVの被害者は、一時保護の際に住みなれた場所を離れ、何も持たずに逃げてくることがほとんどで、心身に深い傷を負い、経済面や子供の養育など、さまざまな問題を抱えております。このような被害者の自立支援のためには、一時保護の後、自立して生活できるようになるまでの住まいの確保やその後の就労に向けた支援、さらに、被害者の6割以上が同伴している子供のケアなど、多くの課題がございます。

  そこで、県では、本年3月に「かながわDV被害者支援プラン」を改定し、DV被害者の支援の充実を図ることといたしました。

  まず、住まいの確保につきましては、一時保護の後も引き続き手厚い支援が必要な被害者には、県の女性保護施設や市の母子生活支援施設などを紹介し、自立に近いことが見込まれる方には、議員お話しのステップハウスを利用していただいております。ステップハウスは県が提供した住居に民間支援団体のスタッフが訪問して、相談や情報提供などの支援を行うもので、今年度から2世帯を増設し、5世帯分を設置しております。

  また、就労の支援につきましては、被害者の状況に応じた相談を行うとともに、厳しい経済状況も踏まえ、民間支援団体が行うパソコン研修などへの助成や新たなステップハウスを利用する方に対する福祉施設での就労訓練などの支援を始めたところであります。

  さらに、被害者と同居する子供の精神面にも深刻な影響を及ぼしていることから、一人一人の状況に応じて児童相談所や学校、スクールカウンセラーなどによるきめ細かなケアに努めているところであります。

  県といたしましては、今後とも、かながわDV被害者支援プランに基づき、市町村や関係機関、民間団体と連携・協力を深めながら、被害者の立場に立った切れ目のない支援に取り組んでまいります。

  次に、DVの問題の周知と予防の取り組みについてでございます。

  まず、DV問題の周知につきましては、県民の方にどのようなことがDVであるかや、暴力は決して許されないものであるということを理解していただくために、県のたより等を活用した啓発を行っているところです。しかしながら、DVは家庭内で行われるため、外部から発見されにくいことや、被害者自身がDVと認識していないことも多く、被害が潜在化しやすいという特徴があり、周知に当たっては、さまざまな工夫が必要であると考えています。

  そこで、被害に気づきやすい医療機関の方に向けた手引を配布して、被害者に相談窓口を教えていただいたり、緊急性が非常に高い場合は、警察や配偶者暴力相談支援センターへの通報をお願いしております。

  また、周囲の方がいち早く被害に気づき、被害者に相談窓口への相談や支援を求めることを促していただけるよう、JRの駅で配られる時刻表に相談窓口の電話番号を記載するなど、具体的な協力を呼びかけているところであります。

  次に、若年層への啓発につきましては、被害が起きてからの対応だけではなく、そもそもDVが起こらないようにするための予防の取り組みも大切であり、若いころから、人間関係においてお互いを尊重することを学ぶことが重要であると考えています。

  特に最近では、若い世代で相手を思いやることができず、交際相手を束縛したり、暴力に発展してしまう、いわゆるデートDVの問題が顕在化してきております。そうしたことから、県内の高校1年生全員に啓発冊子を配布するとともに、NPOとの協働により、デートDVの実態や気持ちの伝え方を学ぶ参加型講座を実施しており、今年度からは高等学校教員向けの出前講座を始めたところであります。

  今後とも、このような取り組みを続けることにより、県民の皆さんにDVについての認識を深めていただき、潜在化しやすいDVの被害への対応や予防につなげてまいりたいと考えています。

  次に、児童虐待についてのお尋ねをいただきました。

  県所管の児童相談所における児童虐待相談件数は増加を続けており、昨年度は過去最高となりました。また、個々の事案も複雑・困難なものがふえております。児童虐待は発達のおくれを招き、あるいは人との愛着関係を築けなくなるなど、子供に深刻な影響を与えるものであり、決してあってはならないものであります。

  そこで、まず、未然防止に取り組むとともに、重篤な事態を招かないよう、早期発見・早期対応に努め、さらには再発防止に向けた取り組みを進めていく必要があります。

  児童虐待は、平成17年から市町村が相談や虐待通告に対応することとなり、県の児童相談所では専門的で困難な事例への対応や市町村に対する支援が主な役割となっております。このため、児童相談所では、市町村が各家庭への訪問などで把握した困難事例への支援や家族関係の修復を通じての再発防止などに努めてまいりました。

  また、児童虐待相談の増加を受けて、平成19年度、20年度の2カ年で30名の人員増を行い、複雑・多様化する虐待問題に対応してまいりました。今後も児童虐待相談は増加すると見込まれますので、市町村への支援や連携を一層強化するとともに、個別の相談事案に効果的に対応することが必要と考えています。

  そこで、今年度からモデル市を設定し、児童福祉司が定期的に出向き、ケース会議への参加や個別事例への助言を行うなど、市の実情に即した支援を試行的に始めております。また、相談事案へ効果的に対応するため、虐待相談ごとに緊急度などを的確に把握する実践的なチェックシートを作成しており、さらに改善を図って、市町村への普及に努めてまいります。

  今後とも、こうした取り組みの充実を図ることにより、各市町村の現状やニーズに応じた支援を行うとともに、関係機関や地域とも連携し、児童虐待の防止に努めてまいります。

  最後に、県の救急医療情報提供体制についてお尋ねをいただきました。

  本県では、救急患者の円滑な搬送を支援するため、救急医療情報システムを整備し、県内の病院数のおおむね6割に当たる211病院を含め、約230の医療機関や消防機関などをインターネットで結び、診療や手術の可否などの情報収集と提供を行っております。

  このシステムの効果的な運用を図るため、神奈川県救急医療中央情報センターを設置しており、24時間体制のもと、医療機関や消防機関からの搬送先の問い合わせに対し、受け入れが可能な医療機関の案内や調整に取り組んでいるところです。

  この中央情報センターでの受付件数を見ると、平成18年度は3,201件、19年度は3,895件、20年度は4,265件と増加傾向にあります。また、これらのうち、医療機関の案内に要した平均所要時間は20分台となっておりますが、他方、2時間を超える案件もあり、増加する件数への適切な対応や時間の短縮が課題となっております。

  そこで、こうした課題も踏まえ、県では医療機関や消防機関など、関係機関の意見を伺いながら、情報システムの一部見直しを行い、この10月から運用することとしています。具体的には、救急患者の適切な受け入れ先を見つけられるよう、対応可能な疾病や医療機関までの搬送距離、妊産婦の合併症に対応した情報などの検索項目を新たに追加するとともに、医療機関における情報入力の負担軽減を図り、効率よく検索できるシステムにしてまいります。

  今回の見直しにより、利用者側の使い勝手の向上と迅速な対応が可能となり、ひいては中央情報センターにおける業務の効率化も期待できるものと考えています。

  今後とも、参加機関の理解と協力をいただきながら、迅速かつ正確な情報提供に努め、引き続き救急患者の円滑な搬送を支援してまいります。

  私からの答弁は以上でございます。

〔病院事業庁長(堺 秀人)発言の許可を求む〕

〇議長(国吉一夫) 堺病院事業庁長。

〇病院事業庁長(堺 秀人) 病院事業庁関係についてお答えいたします。

  こども医療センターにおける臨床工学技士の配置についてお尋ねがございました。

  臨床工学技士は医師の指示のもとに、生命維持管理装置の操作や医療機器の保守点検を行っておりますが、医療機器の進歩は目覚ましく、機器が高度化しておりますので、臨床工学技士の必要性が高まっております。現在、こども医療センターでは3名の臨床工学技士を配置しており、手術時における人工心肺装置や人工呼吸器などの操作を担当するとともに、医療機器がいつでも安心して使用できるよう保守点検業務を行っております。

  高度専門医療を行うこども医療センターには、NICUを初め、各部門にさまざまな医療機器が数多くございますが、これら医療機器の操作業務の多くは、医師や看護師が行っているところであります。そこで、医療機器の保守管理業務については、臨床工学技士を配置することにより、NICUを含めた適切な管理が行われるとともに、医師や看護師が本来の業務に専念することが可能となり、質の高い医療を、より一層提供できることにつながるものと考えておりますので、今後、臨床工学技士の増員を検討してまいりたいと考えております。

  以上でございます。

〔教育長(山本正人)発言の許可を求む〕

〇議長(国吉一夫) 山本教育長。

〇教育長(山本正人) 教育関係についてお答えいたします。

  道徳教育についてお尋ねがございました。

  本県におけるいじめの件数、不登校の児童・生徒数はいずれも全国的に高い数値であり、県教育委員会では課題の解決に向け、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置など、さまざまな取り組みを重ねているところでございます。いじめや不登校が発生する要因や背景はさまざまであり、それぞれの状況に合わせたきめ細かな対応を行う必要がありますが、未然防止に向けての取り組みを強化する上からは、人を思いやる心や規範意識の醸成など、道徳教育の一層の充実が求められております。

  現在、小中学校の道徳教育は総合的な学習の時間や学級活動など、道徳の授業に限らず、さまざまな場面で行われております。

  例えば、車いすやアイマスクの体験などを通して、障害のある人の気持ちを考え、思いやりのある行動に結びつけたり、地域の清掃活動や職場体験などから、社会のルールやマナーを考えさせるといった取り組みが広がってきております。

  また、今年度から導入された新しい学習指導要領では、特に道徳教育の充実がうたわれ、議員ご指摘のとおり、小学校の早い段階から、すべての学年で思いやりの心を育てるとともに、善悪の判断や決まりを守ることを指導することとされております。

  そこで、教育委員会といたしましては、これまでの活動の充実に加え、深刻ないじめや不登校の課題についても、直接道徳の授業で取り上げ、子供たちに自分の身近にある問題として深く考えさせるなど、人の痛みに気づくことができるような指導を進めてまいりたいと考えております。

  さらに、今回の学習指導要領では、道徳の中核を担い、その推進役として、新たに各校1名の道徳教育推進教師が位置づけられたところでございます。今後はそうした教員を生かしながら、いじめ問題への対応も含めまして、道徳教育が各学校において組織的に推進されるよう、より一層の支援を行ってまいります。

  以上でございます。

〔内田みほこ議員発言の許可を求む〕

〇議長(国吉一夫) 内田みほこさん。

〇内田みほこ議員 知事、教育長、病院事業庁長におかれましては、丁寧なご答弁をありがとうございます。

  時間の関係もございますので、自席で要望させていただきます。

  いろいろな社会問題を取り上げましたけれども、一朝一夕では解決できないということで、私も何度か今後もまた取り上げさせていただき、いろいろとご答弁をいただきたいと思います。

  それから、こども医療センターを視察した件なんですけれども、今回はちょっと現場の声を聞いてきたいということで、みずから出かけていったわけなんですが、小児病棟を支えている総合診療部門も、全国的にそうですけれども、人手不足で風前のともしびとなっているということです。中でも、総合診療科は何とか機能しているものの、集中治療科は医師1人だけ、救急診療科に至っては医師不在ということで、それが神奈川県の県民の小児医療の最後のとりでであるはずのこども医療センターの10日前の実情ということなんです。

  そういったところが充実していないと、NICUに2年間入っているお子さんが次に入院できないので、NICUもだんだんいっぱいになってくる、そういった問題や、また1,000グラム以上のはざまにいる新生児がやはり入院できなくて、かえって障害になってしまったりといった、せっかく少子化対策に力を入れていても、こうした新生児の受け入れ先が充実していないと、私としては本末転倒ではないかと感じたところでございます。

  また、当直も土日は自発的に1人ふやして2人体制にしたらしいんですが、平日はやはり当直は1人ということで、それで二十何人の新生児を夜診ているということで、私ははっきり言って、それはすごく驚いたことなんですけれども、ほとんどの新生児は裸の状態で入っていまして、もし機械が故障したり、とまったりしたら、それだけで当直の医師は多分パニックになるであろうと私は想像しているんですけれども、そういったことを考えても、臨床工学技士というのは機械の、もち屋はもち屋で、そういった方も配置することも今後必要になってくると思います。

  また、医療機器の老朽化について、今後、独法化などありますので、余りこちらも言えませんが、例えば膜型人工心肺など、新生児の呼吸不全に伴う体外循環装置が更新切れで、この2年間のうちに救えるであろう新生児が何人か救えなかったという話も最近直接お伺いしたんですが、予算が回らないとか、いろいろなことを含めて、病院全体と現場であっても多少のずれがある、こういったことも認識しました。その他、小児科の女性医師のワークシェアリング、柔軟な研修生制度がないとだめだということと、院内託児所の充実や医師数をふやすには、女性医師をふやすにはとても大切だということを伺いました。

  最後に、事務職の方々が強い牽引力になってくれるかどうかが、今後のいろいろな医療の再建の動向を左右するということで、事務職の方々も情熱を持った方をぜひそこに配置していただきたいと私は要望します。

  医療の分野は医師不足、建物や機器の老朽化、財政赤字とまさに三重苦ですけれども、こうした現場の声を少しでも吸収していただきまして、よりよい地域医療の再生に力を注いでいただきたいと、切に願っております。

  私の質問と要望は以上になります。ありがとうございました。

〇議長(国吉一夫) お諮りいたします。

  休憩いたしたいと思いますが、ご異議ございませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(国吉一夫) ご異議がないと認めます。

  よって、休憩いたします。

  なお、再開は15分後といたします。

                  午後2時38分 休憩

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