平成21年  文教常任委員会 - 0929日−01

平成21年  文教常任委員会

◎《委員会記録-平成21年9定-20090929-000007-文教常任委員会》

1 開  会

2 記録署名委員(森・北井の両委員)の決定

3 県政記者の写真撮影許可

  傍聴の許否について決定

  3件申請 3件許可

  口頭陳情の許否について決定

  請願第62号‐2についての口頭陳情 許可

6 報告事項(教育局長)

    「「神奈川県条例の見直しに関する要綱」に基づく教育委員会所管条例の見直し結果について」

    「相模原市の政令指定都市移行に伴う教育事務所の見直しについて」

    「授業料徴収システムに係る個人情報流出に関する日本IBM()との協定書締結について」

    「県立ふれあいの村の指定管理者の募集について」

    「財団法人神奈川県教育福祉振興会の事業の概要について」

7 日程第1を議題

  提案説明(教育局長)

  経営状況説明(教育局長)

   ()神奈川県ふれあい教育振興協会」

  「()かながわ考古学財団」

  「()神奈川県教育福祉振興会」

10  日程第1について質疑(所管事項及び報告事項も併せて)

 

内田委員

 それでは、質問を開始させていただきたいと思います。このたびの政権交代を経て気になるところとしては、民主党のマニフェストとして公約がありましたけれども、未知数ではありますが、我々文教常任委員会の教育問題が重要な項目事項になっておりまして、いろいろな項目にかなり盛り込まれていると思います。まだまだ先が見えないところではありますが、現時点で認識をするために、いくつかお伺いしておきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 一番の懸案である授業料の実質無償化や、またそれに関する奨学金の扱い、それからもう一つ、教員免許更新制についても少し質問させていただきたいと思います。

 まず、今申し上げましたが、民主党のマニフェストのうち教育に関連して県民に大きな影響を与えるものとしては、どのような施策があるのか、ざっと教えていただきたいと思います。

企画調整課長

 民主党のマニフェスト、政策各論というところを見させていただきますと、全部で55本の政策が載ってございます。そのうち教育に直接関連する施策としましては、二つございます。マニフェストの12番、これが先ほど委員の言われた公立高校を実質無償化し、私立高校の学費負担を軽減するというものでございます。もう一つマニフェスト15番というのが、すべての人に質の高い教育を提供するというものでございます。こちらの方につきましては、幾つか内容がございまして、一つ目が先ほど委員が言われました、教員の資質向上のため教員免許制度を抜本的に見直し、教員の養成課程を6年制、修士課程までとして、養成と研修の充実を図るということがございます。それからもう一つ大きな点としましては、現在の教育委員会制度を抜本的に見直しまして、教育行政全体を厳格に監視する教育監査委員会という組織を設立するなどが掲げられておりまして、県の教育行政に対して大きな影響があるのではないかと思われる施策が掲げられているところでございます。

内田委員

 今お伺いしたところによりますと、やはり高校の授業料の無償化、これは助かるけれども、様々に今、報道されていまして、今後の動向が気になるところですけれども、これが一応実現すると見込んだとして、県当局としては課題というのは何か浮上するんでしょうか。今の時点で想定できることを教えてください。

教育財務課長

 委員お話しのとおり、今、報道でいろいろ動きを聞いております。まず、民主党のマニフェストには、この公立高校の授業料実質無償化ですけれども、公立の高校生のいらっしゃる世帯に対して授業料相当額を助成し、実質的に授業料を無料とするというふうにマニフェストには記載されております。それ以上は記載されていないんですけれども、どういった制度を構築しようとしているのか、私どもとしては情報収集をしているところです。これにつきましては民主党が今年の4月に参議院に法案を提出してございまして、それによりますと、市町村を通じて保護者が市町村に申請し、市町村がその授業料相当額を保護者の方に支給するというような方法が書いてございます。今、それを間接給付にするという大臣のお話もあるようですけれども、万が一直接給付ですと、何点か課題があると思います。一つには、保護者の手続の負担がかかるということがございます。と申しますのは、授業料は相変わらず納めなければいけない一方で、市町村、市役所や役場の方に申請もしなければいけないということで、保護者の方に負担がかかるということが一つございます。また、行政側も事務負担が増えることになります。これは、市町村が申請を受けて支給するとなると、その分お金、事務費だけではなくて人件費も含めて相当かかるということがございます。一方で、学校側は引き続き授業料を徴収するということで変わらないんですけれども、ただし、市町村が授業料相当額を支給するに当たって、例えば在学証明書ですとか必要な書類を学校側が市町村に送らなければいけないのではないかと思いますので、そういった事務費、事務の手間がかかることになり、結局この事務負担というのは税金になるわけですから、そういった部分の負担がかかる。もう1点、授業料を引き続き徴収する場合には、若干、1%未満なんですけれども、授業料の未納というのもございまして、そういった問題が解消されないというような課題もございます。そのような中で、私どもといたしましては、今、報道などで見ますと間接給付の方法というようなことなので、それは適切な方法で検討されているというふうに感じてはいるんですけれども、そういう実施方法も含めて、引き続き情報収集をしながら、もし実施方法等で課題があるようであれば、当然自治体として国にものを申していくべきだと考えておりますので、そういった対応をしてまいりたいと考えております。

内田委員

 間接給付の方向性が強いようですけれども、今後そういった事務負担など、いろいろ課題も上がってくると思いますが、今後はどのように対応していかれるんでしょうか。今の時点でのお考えをお伺いしたいと思います。

教育財務課長

 まずは、正確な情報を収集するということが大切だと思います。私どもも文科省の事務局、また報道などを通して、いろいろ情報収集に努めているんですけれども、情報収集をこれからも続けて、その上で制度設計について課題があれば、より詳細に分析し、この公立学校無償化というのは、趣旨は高校教育の機会均等という趣旨であると思いますので、そういった趣旨が円滑に実施できるように、必要な要請活動をやっていきたいと考えております。

内田委員

 高校の授業料無償化だけではなくて、県財政に大きな影響を及ぼす政権交代であるし、今後いろんな面で注視していかなくてはならない状況だと思いますけれども、もう一つお伺いしたいのは、それによる奨学金の扱いというものは、今の時点ではどのように考えていらっしゃるのでしょうか。無償化になった場合の、奨学金の扱いについて、県としての今の時点でのお答えをお願いします。

高校教育課長

 授業料の無償化が行われた場合の奨学金の必要性等についてでございますけれども、家庭が負担しております教育費の中には、授業料以外の教育費があり、それが大きな負担になっているというふうに、私ども理解しております。また、授業料の無償化が実施されるのであれば、家計の負担を軽減することや教育内容の充実を図るなどが目的であると思いますので、こういったことを踏まえまして、今後動向等を見守る中で検討させていただきたいと考えております。したがいまして、授業料無償化になるからといって、奨学金をすべてやめるということではないと考えております。

内田委員

 奨学金について、今の時点でのお考えは分かりました。もう一つは、教員免許更新制についてですけれども、今、免許制度を2011年に中止するという考えもあったり、教員養成期間を2年間延長するなどの考えもあります。更新制が主張される背景には、教員に対する保護者などの不信感というものがあるのだとは思いますけれども、教員志望者についてその時間と労力が増えるわけですが、負担増となる2年間は子供たちに接することはできないわけですし、違った意味での負担というのも考えられると思います。国全体の問題ではありますが、県としては、教員免許更新制について、今の時点で、何かお考えというのはあるんでしょうか。その辺のところを確認させていただきたいと思います。

教職員人材担当課長

 免許更新制につきましては、民主党のマニフェストにおきましては、教員免許制度について検討していくという方向性になっておりまして、更新制そのものについては言及されていない状況となっております。ただ一部新聞報道等につきましては、免許更新制の今後の有り様についての議論もするということで報道されておりますけれども、私どもとしましては、今現在、文科省の方から具体の情報は頂いておりませんので、今後の動向につきまして、情報を得つつ注視してまいりたいというふうに考えております。

内田委員

 もしも免許の更新制度が大幅に何か変わるとしたら、県としてはどういったところに課題があると、今のところ考えられますでしょうか。

教職員人材担当課長

 今の免許状制度に関してマニフェストの中で言われている点につきまして、現行の養成課程を6年間とするという点がございます。

 現時点では、免許状を取得する際には、大学等におけます学位の取得、例えばこれは大学院修士課程ですと修士、4年生の大学ですと学士、短期大学ですと短期大学士という、そうした基礎資格と、あと大学等における所定の単位を取るというのが免許状取得の条件となっております。これらが6年制ということになってまいりますと、現行で大学4年制を卒業されている方、短期大学の方々というのは、大学に通う期間が長くなりますので、そういった意味合いでは、ちょっとハードルが高くなってしまうなという点が、課題としてはあろうかと思います。なお件数的には、本県では毎年1万件を超える教員免許状を授与しておりますけれども、その9割方は今申し上げました4年制の大学あるいは短期大学の方々が取得されております。そういった状況に置かれている方々が、今後は6年制に向かうということでは、ハードルの面ではちょっと高いかなというふうに考えてございます。あと、更新制につきましては、これは知事の方の今回の本会議の答弁でもございましたように、教員免許更新制につきましては、大学の方においてもシステムの整備ですとか、講座開設に向けての準備をいろいろと進めてきたと、あるいは地方の免許管理者の立場としましては、これは都道府県教育委員会になるわけなんですが、やはり免許管理のためのシステム開発をする際の投資ですとか労力、時間等をかけてきたという経緯もございますので、知事の答弁の繰り返しになりますけれども、やはりそういった経過とともに大学関係者等の御意見を聞いていただきながら、今後広く議論をしていっていただきたいというふうに思っております。

内田委員

 先が見えないということで、免許制度もただハードルが非常に高くなってしまって、それこそ4年制の大学を卒業するだけでも今大変な御家庭も結構多いとされますけれども、これがまたプラス2年ということになると、教師になりたい方の負担も大幅に増えると思います。その辺のところを私は心配していますけれども、授業料実質無償化と教員免許更新制については、これからも情勢が変わり次第、よろしくお願いいたします。

 次は、最近ピークだとは言われておりますけれども、新型インフルエンザについてですが、夏休み中にも全国的に今感染が広がり、特に沖縄県などでは感染が大幅に増え、また本県においても学級閉鎖や学年閉鎖などの臨時休業措置をとっている学校については、連日のように報道されておりますけれども、都筑区の方でも1人の小学生の生徒さんがお亡くなりになってしまって、大変なことになってしまったということもありまして、私たちの神奈川県でも今後は新型インフルエンザの対応について、弱毒性とはいえ、どんな活動に取り組んでいくのかということを、主にお伺いしたいと思います。

 まずは夏休み中の学校における新型インフルエンザの感染状況について、確認させていただきたいと思います。

保健体育課長

 夏季休業中の県立学校における新型インフルエンザと見られる感染の状況でございますけれども、ほとんどが部活の単位の感染ということで、83の学校で322名の生徒がり患をしているという状況でございました。

内田委員

 私の知り合いの中にもお子さんがインフルエンザにかかったという方も実際いらっしゃいますので、やはりこの近くでもだんだん感染が広がってきているのかなということが伺えますけれども、ちょうど夏休み明けの秋ごろ、学校での感染の拡大が懸念されておりましたけれども、その状況を踏まえて、県教育委員会としては、どのような取組を行ってきたのでしょうか、お伺いします。

企画調整課長

 このお答えは複数の所管課にまたがりますので、私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 最近2期制の学校も増えてきたということで、9月1日ということではなくて、8月の下旬から夏季休業が終わってということがございまして、本教育委員会では大きく県立学校に対しまして三つの通知を出しまして、休業後の対応というふうな形で対応しております。

 まず一つ目でございますけれども、8月21日付けで学校教育担当部長名で児童・生徒のいわゆる一般的な指導でありますが、臨時休業等についての通知を出しております。児童・生徒の指導につきましては、これまでも繰り返し通知を出しておりますけれども、1点目としては未然防止で、手洗い、うがい、せきエチケットの励行、それから早期発見という意味では、なるべくインフルエンザ様症状の出る方を早く発見するために、健康観察を徹底していただきたい。それから次に早期の治療ということで、体調不良が出た場合は、速やかに医療機関で受診していただく、こういうものを徹底する通知を出しております。それともう1点としましては、出席停止や学級閉鎖ということで、臨時休業の基準についてお示しをしております。今、学級閉鎖について申し上げますと、1クラス10%程度を目安にしております。40人学級ということで高校で考えれば、3人ないし4人を目安にして学級閉鎖を検討しているということで、期間については5日間というような基準を示しております。

 二つ目の通知が、これは高校教育課長名で8月27日に出した通知でございまして、これは高等学校において臨時休業等をする場合の授業の問題、それから行事の関係に対しての通知でございます。まず臨時休業に対するものでございますけれども、自宅学習であるとか授業の補てんということでございますけれども、事前にきちんと自宅学習に対する準備、または家庭への連絡なんかの体制をとっておくようにというようなことを、適切な指導をしてくださいという通知を出すとともに、もう1点、行事につきまして、行事というのは修学旅行もございますし文化祭等もございますけれども、事前1週間につきましては健康観察を詳細に徹底してくださいというお話をしております。それから、もしその期間に臨時休業、学級閉鎖等が出た場合については、どういう対応をするかということを、教育委員会と相談をしてください、それで方針を決定するという通知を出しております。

 それから三つ目についてでございますけれども、これは特別支援学校ということで、障害のある児童・生徒の方が在籍しておりますので、健康面への配慮としては少し違った配慮が必要だろうということで、別に8月25日付けで子ども教育支援課長から通知を出してございます。健康観察自体、より丁寧に徹底するということでございまして、各家庭では登校前の検温等も必ず行ってくださいというようなことを行っておりますし、また登校した場合には、すぐに児童・生徒の様子をきっちり観察してくださいとか、そういう通知を出しておりまして、これは基本的に高校と同じでございますけれども、更に丁寧な内容になってございます。それからもう1点、休業の関係につきましては、やはり違ってございまして、先ほど10%を目安というふうに申し上げましたけれども、特別支援学校の場合に、例えばスクールバスでとかいろいろ通ってくる状況、または給食等の関係もいろいろ状況が違うということで、これは個々にいろんなケースがあるだろうということで、たとえ1人であっても感染拡大が懸念されるような場合には、学級閉鎖措置等の対応をするということで、教育委員会と協議の上で対応を決定していただきたいという通知を出してございます。

 これらの通知は、基本的には県立学校に通知してございますけれども、同時に市町村教育委員会にも参考に送っておりまして、県の取組を参考にしてくださいというふうにしまして、現在基本的にこの通知に基づいて対応しているという状況でございます。

内田委員

 今回の新型インフルエンザが弱毒性だということで、強毒性がなくて良かった部分もあるんですけれども、しかしながらまだまだ先々でどのように変異していくかは分からないので、やはり教育委員会としても、これからもいろいろ見ていかないといけないと思うんですけれども、特に夏休み明けの県内の公立学校の新型インフルエンザによる臨時休業措置の状況というのを詳しく教えてください。

保健体育課長

 夏季休業明けの公立学校の臨時休業の状況でございますけれども、県教育委員会では、現在各市町村及び県立学校に対しまして、1週間ごとの臨時休業の状況について調査をし、把握をしております。まず第1回目は9月7日から13日までの状況ということで、市町村立学校では79校、そして県立学校では6校で、休業措置をとっております。第2回目が、これが一番新しい情報でございますけれども、9月14日から20日までの状況では、市町村立学校では105校、県立学校では11校ということで、第1週目に比べて増加をしているという状況でございます。

内田委員

 ちょっと前のニュース報道では、ピークが割と急に上がってまた下がるようなことが出ておりましたけれども、実際にこのデータは2回分しかありませんけれども、市町村立学校で79校から105校に増え、また県立では6校から11校に増えていますけれども、その辺の見方というのは、県としてはどのようにとらえているのでしょうか。このまま増えていくんであろうという認識をされているんでしょうか、確認させてください。

保健体育課長

 先ほどの状況をもう少し詳しく、1回目と2回目の調査の比較を説明させていただきますと、市町村立学校では学級閉鎖が62校だったものが、次の週は85校、それから学年閉鎖は14校であったものが17校というふうに増加しております。それから県立学校では学級閉鎖が4校から、次の週は8校で、学年閉鎖は1校から3校ということで、やはり増加をしてきております。8月21日付けの厚生労働省の流行シナリオというのを見ますと、今月末から10月上旬がまず一番のピークであろうということで、そのシナリオと同じように、本県でもピークが来ているのではないかというようにとらえておりますけれども、今後どうなっていくのかは、またこの状況をきちっと把握をしながら、対応について検討させていただくということになっていくと思います。

 また地域性につきましては、神奈川県内においては、地域性というのは全く見られておりません。大体県内すべての地域で発生しているという状況でございます。

内田委員

 先ほどもおっしゃっていただきましたけれども、例えば入試の時期にかなり広がったりだとか、そういった大きな行事のときにどうするかというのを、教育委員会として指揮していかなくてはならない問題が出てくると思いますけれども、今例えば大学入試の12万人が受験するような会場ではどういう対応をしようかということが問われていますけれども、例えば入試の時期にまん延した場合のこととかを想定されていらっしゃるんでしょうか、お伺いいたします。

高校教育課高校教育企画室長

 現段階では、断定的なことを申し上げることはできませんが、基本的には季節性のインフルエンザと同様の対応をしてまいりたいと考えています。これまでの季節性のインフルエンザの対応でございますが、入学者選抜の日程は変更せずに実施いたしまして、り患した受検生につきましては、医師の指示に従っていくことといたしました。一方、検査を実施する高校側では別室を設けまして、そこで受検していただくことにより、他の受検生への感染を防ぐといった対応をとりまして、可能な限り受検できるようにしてまいりました。しかし今後、新型インフルエンザの流行によりまして欠席者が多数発生することが想定される場合には、他の都道府県や文部科学省の動向を注視しながら、慎重に判断してまいりたいと考えております。

内田委員

 そういったことも考えながら、この冬どうなっていくのかというのが一番大きいと思います。結局、普通の季節性のインフルエンザは、やはり冬にはやっていたことが今まで多いので、それと重なってどのようになっていくかということが、私としては大変気になるところでございます。今後、感染が拡大することが懸念されておりますけれども、その防止のために今後県教育委員会としては、どのような取組を行っていくのでしょうか、お伺いします。

保健体育課長

 委員のおっしゃるとおり、今後は秋から冬にかけて感染の拡大が予想されているところですけれども、まずは新型インフルエンザにかからない、まん延させないということが一番大事なことというようにとらえております。学校における健康観察それから手洗い、うがいの指導の一層の徹底、各家庭においても登校前に検温を実施しまして、発熱時は登校を控える、医療機関で受診することなどにつきまして、改めて県立学校だけでなく市町村教育委員会に対しても、先ほど企画調整課長が申し上げましたように通知したところでございます。そういうような対策をしながら、感染拡大の防止に努めております。また感染予防に万全を期すため、各学校に対しまして手洗い用の石けんや消毒液の購入について、追加の予算配当等を行ったところでございます。

内田委員

 新型インフルエンザについての要望を申し上げます。

 先ほども申し上げたように、県教育委員会としては、これまで様々な取組をされてきたことは理解いたしましたので、今後もいろんな新型インフルエンザの変異も見られるかもしれませんし、そういったことの危機感を少し持っていただいて、今後の学校環境に対する徹底をお願いしたいと思います。また発生状況やそれに伴う国の対応策の変化も考えられますので、より情報を的確に把握するとともに、県の危機管理対策本部会議等を通じて、県の関係部局と、特に保健福祉部との関係を密にしながら、感染拡大防止の取組を一層進めていただくよう要望いたします。

 それでは、報告資料の2ページで報告がありました臨時特例奨学金について質問したいと思います。

 ここ数年、所得格差が拡大していることが大きな問題となっております。また昨年のリーマンショック以降の厳しい経済状況の一方で、教育費への負担増、負担感がますます皆さん大きくなっていると考えております。今回、国の補正予算に対応して、高校生修学支援基金を設置して経済的に支援の必要な高校生に対する臨時特例奨学金の貸付けに取り組まれるという御報告をいただきましたが、学習に意欲のある子供たちの修学に関する経済的支援の重要性が増していると思われますので、高等学校奨学金について、まず応募要件と貸付条件など、制度の概要を質問させていただきたいと思います。

高校教育課長

 従来の高等学校奨学金の制度でございますけれども、県内に在住して県内の高等学校等に在学している生徒及び保護者が県内に在住している高等学校等の生徒で、学資の支援が必要な者に奨学金を貸し付けているということでございます。貸付額につきましては、国公立については月額2万円、私立学校につきましては月額4万円となっております。所得要件でございますけれども、主な生計維持者の年間所得から世帯の状況によります特別控除額、これは私どもの方で独自に設定しておりますけれども、例えば大学生の方がいらっしゃれば110万円引くとか、そういうことでございますけれども、それを差し引いた認定所得が554万円以下の方というふうにしております。この認定所得554万円というのは、例えば御両親と公立高校生、中学生2人のお子さんがいらっしゃる4人家族の一般の給与所得の世帯ですと、年収に換算しますと大体800万円程度ということでございます。また成績要件でございますけれども、先ほどもちょっと御報告は申し上げましたけれども、平成23年度までの時限措置として要件の緩和も考えているところでございますが、これまでは2年生以上の生徒に対しまして、前年度の全科目の評定平均値が3.0以上の者としております。ただ生活保護世帯につきましては、これは対象外としているところでございます。

内田委員

 次に奨学金についての現状ですけれども、今年度の高等学校奨学金の応募状況と採用状況をお伺いしたいと思います。

高校教育課長

 今年度の奨学金の応募状況でございますが、第1回目の貸付けを決定させていただきました6月の時点では、応募者が4,238名、採用者が3,837名でございまして、401名の方が未採用となっておりました。現在の厳しい経済状況を踏まえまして、今年度措置していただきました緊急経済対策特別奨学金の予算、約1億円でございますけれども、こちらを前倒しで執行させていただきまして、7月に追加して貸付けの決定をいたしましたが、それでもなお、いまだ211名の方の貸付けがなされていないと、こういう状況でございます。

内田委員

 前回の定例会で、橋委員から、奨学金未採用になった方について、将来的には何とかできないのかということがあったと思いますけれども、今回の国からの交付金について、各都道府県への交付の基準や必要可能な範囲など、具体的な内容をお伺いしたいと思います。

高校教育課長

 今回の国の高等学校授業料減免事業等支援臨時特例交付金、この交付金は奨学金事業及び私立の高等学校の生徒の授業料減免措置に係る補助事業を支援するために、全国の都道府県3年分として総額4857,000万円を、各都道府県にそれぞれの事業実績に基づいてあん分しまして、今年度中に交付されるということになっております。本県に交付されます総額は、先ほどちょっと御報告させていただいたとおり、過去の全国と本県の事業実績で積算いたしまして、約259,500万円を見込んでいるところでございます。この交付金は2回に分けまして、今年度中に交付される予定となっておりまして、11月中旬に第1回目の交付決定がされまして、来年の3月下旬に第2回目の交付決定がされることになっております。

 また、この交付金は今年度から平成23年度までの事業が対象となっておりまして、各都道府県は基金を設置することが、この交付の要件になっているところでございます。本県では、したがいまして、この定例会におきまして、この交付金を積み立てます神奈川県高校生修学支援基金条例の制定をお願いしているところでございます。

 次に、この交付金の活用についてでございますが、この交付金の活用対象となりますのが、今年度から平成23年度までの各年度におきまして、平成20年度の事業実績に比べまして増加した分と定められております。この増加分につきまして、毎年度この基金から相当額を取り崩すこととなっているということでございます。

内田委員

 この交付金額にしろ活用対象にしろ、うまくやっていかなくてはならないと思いますけれども、県教育委員会では、この交付金を活用して臨時特例奨学金として奨学金の充実を図るということを承知しておりますけれども、具体的な内容をお伺いしたいと思います。

高校教育課長

 臨時特例奨学金についてでございますけれども、先ほど答弁させていただきました今年度まだ未採用となっている211名の方、この方に再度貸付けについての意思を確認させていただいた上で、至急採用させていただきたいと考えております。今回の交付金を活用しまして、今年度から23年度までの時限措置ではございますけれども、先ほど申し上げたとおり、成績要件の緩和、これも実施していきたいと考えております。先ほど御説明したとおり、現行では2年生以上の生徒、前年度の評定平均3.0以上ということでございますが、この3.0に満たなくても進級あるいは卒業の見込みがあると校長先生が判断された方、校長先生が推薦される方は緩和をしたいと考えております。また、この特例奨学金につきましては、補正予算等の条件が整い次第、各高等学校等に対して速やかに周知するための準備を今進めているというところでございます。

内田委員

 今お伺いしますと、この臨時特例奨学金というものが交付金と同様に、3年間の時限措置ということですけれども、結局平成23年までということですが、その後の平成24年度以降の対応というのは今の時点ではどうなるのか、決まっていたらお伺いしたいと思います。

高校教育課長

 平成24年度以降の対応でございますけれども、国の方も平成23年度までの時限措置ということで、平成24年度には今の経済状況が今よりは良くなっていくだろうと、そういう見込みの下に措置されているものと、私ども理解しております。ただ23年度の時限措置とはしておりますけれども、24年度以降の対応につきましては、やはり今後の応募状況、また経済状況、また国の動向、こういうものを十分見守った上で検討をして、24年度以降どうするかということを判断してまいりたいと考えているところでございます。

内田委員

 最後にお聞きしたいんですけれども、やはり奨学金に応募される方々、生徒さんは、やっぱり年々、ここ3年ぐらいについてなんですけれども、かなり増えてきているということは言えるんでしょうか。

高校教育課長

 人数的には増えているんですけれども、特に増えているのは私立に通う生徒さんの方です。特に県内に在住している方であれば、県外の学校に通っていても奨学金貸付けの対象になりますので、県外の私学等に通われている方、この辺りが増えております。公立の方はずっと横ばい状態、若干減っているというような状況も見受けられるという状況でございます。全体としては、増えているということでございます。

内田委員

 臨時特例奨学金について要望を申し上げます。

 今の状況からしますと私立の方の応募が増えていて、県立の方は横ばいということですが、やはりここ平成23年までの時限措置とはいえ、多少なりとも少しずつ増えていくのではないかという見込みもありますので、格差社会と言われる中で、これからも奨学金制度への期待が深まっていくと思われます。将来社会を担う子供たちが安心して修学するために、今回の時限措置が終了した後でも、何らかの形で奨学金を必要とするお子さんに1人でも多く貸付けできるような、きめ細やかな対応というものをよろしくお願いします。

 

(休憩 午前1156分  再開 午後1時2分)

 

内田委員

 続きまして、先日静岡県の駿河湾沖で震度6弱の地震が起きるなど、最近各地で地震がたびたび起きまして、いつ東海地震が発生するのかということがあります。そこで県立高校の耐震化については、今年度から県立教育施設再整備10か年計画、いわゆるまなびや計画でもって、様々な手法によって急ピッチで耐震化を進めていますし、主要施策でもそういったところも掲げられていると思いますけれども、その中で今年度行う補強工事というか耐震のスリット工事のことについて、何点かお伺いしたいと思います。

 今年度の上半期において調査を行い、それに基づき工事を行うと聞いておりますけれども、調査の結果というものはどういったものになったんでしょうか、お伺いいたします。

教育財務課まなびや計画推進室長

 耐震スリット工事でございますけれども、一般的にこの工法は、建物の柔軟性を高めまして、建物の耐震性といいますか、我々も構造耐震仕様と呼んでいますが、いわゆるIs値といわれる数値がございますが、この数値を上げることができるというふうに言われてございます。ただし、どの建物でも有効であるということではございません。当然ながら建物にスリット、溝を入れるわけでございますので、場合によっては逆効果ということも考えられます。このためこの工事を行う際には事前に精密な調査を行いまして、実際の有効性を確認する必要がございます。今回、大規模補強が必要とされている校舎は91棟ございますが、その中で低強度コンクリートなど、特に工事を急がなければいけないといったものを除く42棟を対象にこの調査を行いました。その結果、27棟についてはこのスリットを入れることによってIs値の改善に一定の効果があるだろうというような判断がされております。この有効性が確認されました校舎につきましては、今後、個々のいろいろな状況を勘案いたしまして、順次工事を行ってまいりたいと、このように考えております。

内田委員

 結局、今27棟について補強したらIs値の改善に効果があるという判断がされているということですが、スリット工事を施工すると、地震に対してかなり強くなるということですが、具体的にはどの程度補強されるのかということと、もし分かればコスト面でどのくらいなのかということを聞きたいと思います。

教育財務課まなびや計画推進室長

 スリット工事は鉄筋コンクリートの校舎の場合、鉄筋コンクリート製の柱がありますが、その柱を囲むように両側に窓がございます。その窓の上下にそれぞれ、垂れ壁、腰壁というような壁がございまして、この壁が柱を押さえつけているということでございます。地震が起こりますと、本来柱が横に揺れて、その地震の力を吸収しようとするわけですが、この場合くっついている壁が、柱が揺れることを邪魔することによりまして、地震の力が柱の一定の部分に加わって集中すると、そういうこともございまして、柱が破断と申しますが、折れてしまうようなことが想定されるわけでございまして、スリット工事は柱と壁の間に溝を入れることによって、その柱の融通性といいますか柔軟性を高めていこうと、こういう工事でございます。

 どの程度の改善かということでございますが、これはケース・バイ・ケースでございます。私ども今回の調査の中で、想像以上にこれは良い結果が出そうだと、こういうものもございますし、その逆に先ほど申しましたように、これは下手にスリットを入れると本当に逆効果になってしまうと、こういうことがございますので、それは建物のいわゆる形状ですとか、それから経過年数ですとか、こういったものによってもそれぞれ違ってくるのかなということでございます。

 それからコスト面というお話がございましたが、これも申し訳ございません、本当に千差万別でございまして、一概に幾ら削減できるだとか、こういうようなことはちょっとなかなか申し上げるのは難しいと思います。ただし、27棟について効果があるというお話を今させていただきましたが、そのうちこれまで相当大規模にやらないとなかなかちょっと難しいのかなというような建物についても、もう少し例えば耐震ブレースを入れる数を少なくするだとか、耐震壁の数を少なくするだとか、そういう形でも対応できそうだと、こういうような事例が幾つか出てきそうだと、そういう状況でございます。

内田委員

 スリット工事は補強要素が強いということですけれども、耐震工事で仮設校舎を設置するなど、スリット工事であっても決して短い期間で終了するものではないと思いますが、どのくらいの工事期間を要するんでしょうか。

教育財務課まなびや計画推進室長

 いわゆる耐震工事、一般的な耐震ブレースを入れたりとか耐震壁を入れたりとか、そういう工事がメインになりますが、当然ながら生徒さんがいながら工事をするというわけにはいきません。そうなりますと、例えばいわゆる仮設校舎を建てて、そこに避難をするだとか、そういった形になりますが、一般的に通常、仮設校舎の設計から始まって仮設校舎を建て、生徒さんが避難をし、それからいわゆる改修工事、補強工事にかかるということになりますと、短くとも三、四年あるいはそれ以上ということで我々想定しております。ただしスリット工事の場合は、当然ながらその数にもよりますが、生徒さんが不在の休みの日を利用してスリットを入れると、こういうことを今計画しておりまして、そうした場合であっても大体1棟当たり平均4箇月ぐらいかかるというふうに考えておりまして、今年度中にはそういう形でスリットの方を進めてまいりたいというふうに考えております。

内田委員

 普通の場合で三、四年というのは相当かかるということで、スリット工事だと休みの日を利用して4箇月ということで大分違うんですが、補強工事ですからそうだと思いますけれども、あくまでも緊急避難的な要素の手法ということになりますけれども、スリット工事を施工した校舎については、その後はどのように耐震対策というものを行っていくのでしょうか、お伺いします。

教育財務課まなびや計画推進室長

 建物の耐震性能は、主に建物が持っています強度と、それからその柔軟性、いわゆる粘りというんでしょうか、こうしたものによって決まると言われております。お話がございましたように、耐震スリットが万全というわけでは決してございません。スリット工事により、先ほど申しましたように柱の束縛を解くことによって、建物全体に粘り強さを加えることはできますけれども、耐震ブレースですとか、あるいは耐震壁、こうしたものの設置によりはじめて強度を加えることができるというふうに考えています。ただスリットを入れることによりましてIs値が高くなりまして、現状に比べて安全性というものが間違いなく増してくるだろうというふうに考えておりますので、その後の補強工事の優先順位等につきましては、全体の校舎の状況ですとか予算の状況ですとか、いろいろ配慮しながら改めてまた検討してまいりたいと、このように考えております。

内田委員

 今回の調査で、効果がある27棟以外について、スリット工事を行わない高校もあるということになりますけれども、それらについては、どのように対応していくつもりでしょうか、お伺いします。

教育財務課まなびや計画推進室長

 調査を行った対象としては42棟、それからそのうち効果が見込めるものが27棟ということでございまして、差し引き15棟ということになりますが、そのうちの2棟につきまして、今回調査を行った結果、スリットを入れなくても小規模補強で済みそうだと、こういう結果が出てございます。残りの13棟につきましては、スリット工事を行ってもほとんどIs値の改善は見られないということでございます。これらのほとんどがスリットによって、先ほど申しましたように、粘り強さというのは増すんですが、いわゆる強度という部分で、もともと思った以上に不足しているという状況がございまして、スリット工事と同時にいわゆる耐震鉄骨ブレースを入れたりとか、耐震壁を設けたりとか、そういった対策が必要だというふうに考えております。これらにつきましては、教育委員会といたしましても、できるだけ早い時期に耐震化工事に着手できるよう、今後努めてまいりたいと考えておりまして、先ほど申しましたように、スリット工事によって効果が出ると、こういう緊急対策を行う校舎と併せて、全体の優先順位等を考えてまいりたいと考えております。

内田委員

 耐震スリット工事について要望を申し上げます。

 来年度もそうですし、この先もそうですけれども、県の財政が大変厳しい中、やはり耐震化というようなものは学校現場の中で一番大事なハードの部分だと思います。比較的低予算でこのスリット工事ができるということで、たくさんある高校の耐震化をいかにして進めるかというのは、本当に課題だと思いますけれども、このスリット工事を含めて、耐震補強対策についてはこれからも優先順位を考えて、着々と整備していただきたいと思います。

 次は、先ほど報告資料の6ページにありました授業料徴収システムに係る個人情報流出に関する日本IBMとの協定書締結についてですけれども、数点お伺いしたいと思います。

 最初に、資料によりますと授業料徴収システムの開発委託業者である日本IBMから、県立高校の生徒の口座情報がインターネット上に11万人分も流出したということですが、より具体的な説明をお伺いしたいと思います。

教育財務課長

 流出した経緯ということで、お答えさせていただきます。

 昨年の9月でございますけれども、県庁に匿名のファックスがございました。この内容は、インターネット上に授業料の徴収関係の情報が流れていると、そういう内容のファクスがございまして、そこで私ども平成17年度にこの授業料の徴収システム、これはIBMに開発委託をしておりましたので、IBMに調査を求めました。そうしましたらば、IBMの子会社の社員のパソコンがインターネットのウイルスに感染しているということが判明いたしました。さらに、社員のパソコンの中にある、システム開発に使う情報というのは委託が終わると削除するということになっておりまして、そういう報告も頂いていたんですが、実は情報が残っていたということも判明しました。この9月時点では、IBMに捜索というか調べさせたところ、その時点ではインターネット上への流出は確認できませんでした。ただ24時間インターネット上を監視する必要があるということで、監視させておりました。その後、昨年の11月に約2,000人、その後今年の1月に、その2,000人を含む11万人、これは平成18年度に県立高校に在籍した生徒約11万人なんですけれども、その口座情報などの個人情報がインターネット上に流出しているということが確認されました。その口座情報というのは、例えば学校などのコードとか、それから住所、氏名、それから口座振替に使う金融機関のコード、それから口座番号、こういったものが流出したということを確認したところでございます。

内田委員

 それに関しまして、結局口座番号は流出してしまったんですけれども、何か金品というかそういったものに関して苦情が来たというか、相談があったりしたんでしょうか。またそういった相談件数の推移とか、そういった相談内容についても、何かあったのかということを、ちょっと確認しておきたいと思います。

教育財務課長

 11月に情報流出が確認されたということで、早速11月に相談窓口を設置いたしました。相談件数で言いますと、11月から今年の3月まで2,118件、相談がございました。今年度に入りましてからは、4月1日に1件、御相談、お問い合わせがございましたけれども、それ以降は一切相談あるいは問い合わせがございません。それで、11月最初のころの御相談あるいはお問い合わせは、事実関係の確認、どういうことが起こったんだというようなこと、それから例えば口座を変えた方が良いのかというような御相談、お問い合わせがございました。そのときには大変申し訳ないことをしたということはお話しした上で、専門の金融機関などにお聞きいたしますと、口座番号が流出しただけで直ちに被害が生ずるということは、通常はあり得ませんよというようなお話を頂いておりましたので、そのことをお話しするとともに、ただしやはり気になるところがあるわけですから、できれば口座を変更されたらよろしいのではないでしょうかというようなお話もさせていただいたところです。その後、2月、3月ごろまで、4月1日の1件までなんですけれども、終わりの方では、どの口座が流出した口座番号なのか、そういうようなお問い合わせもあったところですが、今日、冒頭に報告がございましたように、被害につきましては不幸中の幸いということで、今のところ被害を受けたという御報告がございません。そういった状況でございます。

内田委員

 そういった流出した生徒さんが11万人もいらっしゃるということですけれども、個人情報は今はもうインターネット上では見れないようになっているわけですね。

教育財務課長

 二次被害の防止ということで、インターネット上、これはIBMに指示いたしまして、IBMが技術的な措置をいたしまして、今年の2月末以降、インターネットでそういう情報を見ることはできない状態になってございます。

内田委員

 今回IBMの委託会社というか下請の会社ですが、何かその業者とか、そういったパターンはこれからもあり得ると思いますし、やはり業務委託会社によるいろんな契約とか違約金とか、先ほど教えていただきましたけれども、さらに、県教育委員会としては責任を持って再発防止に取り組む必要があると思われますけれども、どのように取り組んでいくのか、お聞きしたいと思います。

教育財務課長

 こういった委託会社から情報が漏れてしまったということは、あってはいけないことですけれども、ある意味では全庁的な課題ということで、全庁的な組織の情報化推進調整会議というのがございまして、その下にワーキングをつくって、再発防止のマニュアルをつくったというのがございます。当然、教育委員会も参画したんですが、そのマニュアルを踏まえて、教育委員会の中でもいろいろ議論し、共通理解の上、再発防止に今取り組んでいるところです。具体的には例えば情報を個人情報など大事な情報を取り扱うわけですから、作業場所を限定するとか、それから従事する者を限定する、これは当然のことなんですけれども、この確認を徹底する、それからもう一つ、契約満了時などに当然情報を消去する必要があるわけで、これを今後は必ず任せ切りではなくて、県職員も立ち会って、この消去を必ず確認すると、こういったことによってこうした事故が二度と起こらないように徹底してまいるということで進めていくところでございます。

内田委員

 この件の要望を申し上げます。

 今回の流出の原因者である日本IBMですけれども、その責任を明確にして、県への賠償を求めるとともに、生徒や保護者が将来被害を受けた際にIBMが賠償する旨を協定書で明確にしたことと、やはり今後につながりますので、全庁的に取り組む問題だとは思いますけれども、特に生徒さんたちというのが11万人とかなり多かったので、今回は金品の被害などはなかったからまだいいようなものの、私自身もカードでネットからショッピングすることがあるんですけれども、それをやっていたために、知らない間にカード番号を盗まれてしまって、十何万円以上の請求が来そうになったんですが、それはそちらの会社でちゃんと見付けて、そうではないですよねという確認が来たんですけれども、そういったことになると本当に恐ろしいなと思いますので、やはりこれで一気に100%、パソコンの場合は本当に分からないというか未知数ですから、やはり全庁的にこれは取り組まないといけないし、難しい問題だとは思うんですけれども、やはり委託する業者に対しては、はじめの取り決めをしっかりとしていただいて、やはり県職員の立会いの下に削除するとか、きっちりやっていくことによって予防できるんではないかと思いますので、今後とも気を付けてください。よろしくお願いします。

 次は、今の子供たちの状況を見てみますと、今のパソコン世代については、パソコンの操作とか様々なゲーム機器の操作などは本当にたけていて、すごいなと思うことがあるんですけれども、やはり特に読み書き、昔はそろばんと言っていましたけれども、今は計算、算数ですけれども、生活していく上で最低限必要な基礎学力が少なからず低下しているんではないかという懸念がありまして、特にパソコン世代ですから、どうも基本的な漢字でさえ書けないといった状況を私も目にすることがあり、最近ちょっとアルバイト的に雇った方が、本当に漢字をなかなかすぐ書けないような感じなので、この基礎学力の向上と確かな学力の向上というのは永遠の課題だと思いますので、今回子供たちの確かな学力向上について、何点か伺いたいと思います。

 まずは子供たちのこういった状況、読み書き計算のような基礎学力の現状について、県教育委員会ではどのように認識しているのか、今一度お伺いいたします。

子ども教育支援課長

 子供たちの学力でございますが、何をもって学力とするかということにつきましては、様々な議論がございますが、お話にございました読み書き計算などの基礎学力につきましては、例えば30年前、40年前の子供たちと比較する客観的な指標はないものの、現状としてはそれらの学力の定着が必ずしも十分であるという認識は持っておりません。現に平成7年度から継続して実施しております神奈川県の学習状況調査の結果におきましても、小学校5年生、中学校2年生、いずれにおいても漢字を書くことや基本的な計算を解く力については課題があるととらえております。

内田委員

 それでは、日本全国でもいろんなデータ、指標というのははっきりはしないとは思いますけれども、国際的に見て今の日本の位置というか、一番新しい調査について何かございましたら、ちょっと具体的に教えていただきたいと思います。

子ども教育支援課長

 国際的な調査に関しましては、OECDの生徒の学習到達度調査という、いわゆるPISAの調査と言われているものがございまして、2000年、2003年、2006年と実施をしております。この調査は、義務教育修了段階の15歳児を対象に、知識や技能を実生活の様々な場面でどの程度活用できるかを調査するものでございまして、過去3年間とも科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの3部門の調査が行われております。直近では、2006年の調査では、OECD加盟30箇国を含む57の国、地域が参加をしております。こういったものの結果を見てみますと、過去3回の結果でございますが、日本の結果は例えば科学的リテラシーにつきましては、2000年は2位、2003年が2位、2006年が6位です。読解力で言いますと、2000年が8位、2003年が14位、2006年が16位、また数学的リテラシーで言いますと、2000年が1位、2003年が6位、2006年が10位となっておりまして、低下傾向が続いていると考えられるところでございます。

内田委員

 今お聞きしますと、数学的なリテラシーは2000年が1位だったのに、2006年は大分下がっていると。また特に読み書きの読解力ですか、8位から16位に、かなりこれは、やはりゆとり教育が入ったからなのかどうなのか、ちょっと私も分からないのですが、現在の子供たちの学力の状況にはどんな対処があると考えられますでしょうか。

子ども教育支援課長

 こういった状況につきましては、家庭、地域はもとより、子供たちを取り巻く社会全体の変化といったことが一つの要因ではないかなというふうに思っております。ここ数十年、情報通信技術が飛躍的に進展しておりますので、例えば漢字が書けないとか計算が苦手だということが、必ずしも日常生活において不便さにつながっていないのではないかという、そういう社会全体の変化があるのかなというふうに思います。また、ほぼ10年に一度改訂される学習指導要領で示される内容の変化についても、影響は大きいと考えております。例えば平成10年の学習指導要領改訂では、学校5日制の導入であるとか、指導内容の3割削減といったことが行われまして、結果的に授業時間数が減少しております。そうしたことの影響で、知識の定着のための繰り返し学習であるとか、あるいは実験、観察、そういった活動に充てる時間が少なくなっているという状況がございます。現在の子供たちの学力の状況については、こういった様々な要因が、その背景となっているのではないかと考えております。

内田委員

 様々な要因があるということですが、小学校では平成23年度から新しい学習指導要領が全面実施されると聞いておりますけれども、この指導要領で、こういった基礎学力とか確かな学力の向上については、どのように対応していこうとしているのか、お伺いします。

子ども教育支援課長

 お話にございました今回の学習指導要領では、基礎的、基本的な知識や技能の習得、さらに、これらを活用した思考力、判断力、表現力の育成が改訂の重点とされております。そのため小学校では低学年から中学年について、体験的な学習であるとか繰り返し学習などによる読み書き計算の能力の育成が重視されておりますし、また中学年、高学年では、実験や観察などを通して、思考力を育てるといった活動が示されております。

 そこでこうした指導に必要な授業時間数の確保が打ち出されておりまして、国語については低学年を中心に、また算数についてはすべての学年で授業時間数が増加しております。委員お話しのとおり、この学習指導要領は、平成23年全面実施でございますが、現在各学校において年間指導計画の作成が進められております。県教育委員会としても、全面実施までの間に、この趣旨の徹底が図られるように、様々な機会に周知に努めているところでございます。

内田委員

 私どもの年代は、計算ドリル、漢字ドリルとか、宿題もあったし、結構繰り返しやることには慣れているんですけれども、やはりゆとりの教育以降、時間数も少なくなって、学力の差というのがだんだん子供によって出てくるのかな、また環境もありますし、出てくるのかなと認識しておりますけれども、子供たちの学力の差というものは、小学校、中学校と学年が上がるに従って広がっていく現状があると思いますが、各学校ではどのような対応と工夫をしているんでしょうか、お伺いします。

子ども教育支援課長

 学年が上がるに従って学習内容が難しくなるといったことがございますので、各種のアンケート調査などを見てみましても、学年が上がるに従って授業がよく分かるという回答が少なくなっている実態がございます。各学校では、こうした状況に対応するために、特に授業の理解度に幅があるといわれる算数などを中心に、少人数指導を導入し子供一人一人の学習の状況を把握して、励ましたりあるいはアドバイスしたりすることで学習意欲を高める取組を行っております。特に教員志望の大学生とか、あるいは教員免許を持つ地域のボランティアが授業に参加したり、あるいは放課後に個別に学習相談に応じるなどの取組を行っている学校も増えてきておりまして、市町村教育委員会が独自に学習支援のスタッフを配置しているというところもございます。

 また、今小学校の例をお話ししましたが、中学校になりますと、思春期とも重なって心理面あるいは情緒面など様々な面で不安定な要素も多いところでございますが、中学校においても小学校と同様の対応ですが、特に学級担任制の小学校と比較しますと、教科担任制でありますので、学年単位あるいは学校全体で組織的な対応をしていることが多くなります。例えば昼休みとか放課後に学習相談をしている学校が、昨年度の調査で、中学校の約7割がそういった活動をしていると答えているとか、特に定期テスト前には部活動を1週間程度休みにして、放課後に学習相談の時間を設定すると。また夏休みなどの長期休業期間の学習会ということでは、中学校の8割程度が生徒一人一人の学習上の課題に応じた指導を行っているというところでございます。ただそうした動きの一方で、中学校におきましては、どうしても小学校段階で習得しなければならない基礎学力が不十分なままで入学してくる生徒も多くございまして、こうした生徒については、基本的な生活習慣の確立あるいは家庭との連携が不可欠でございますので、担任1人に任せることなく、学年全体で共通理解を図りながら、チームとして指導に当たっていると、こういう現状でございます。

内田委員

 それと日ごろから思っておりますのは、やはり個々の担任とか教師の力量で、かなり子供たちの意欲とか学力に本当に非常に影響して差が出るということがあると思いますけれども、県教育委員会としては、教師の授業力向上にはどのように取り組んでいるのでしょうか。

子ども教育支援課長

 教員の授業力向上でございますが、まずは教員への研修がございまして、県立総合教育センターにおいて、法的に位置付けられている初任者研修や10年経験者研修に加えまして2年、5年、15年、25年など、経験年数に応じた研修の中で授業力向上について扱っております。また平成19年度からは、優れた授業を実践している教員の表彰制度を導入いたしまして、受賞した教員が地域で模範授業を公開したり、その授業を映像化して研修に活用したりするなど、教員の具体的な実践力の向上に役立てている、こういったことがございます。

 さらに、各地区で開催している教員対象の各種の研修会がございまして、本県の指導主事が直接、新学習指導要領に対応する具体的な授業改善について説明したり、あるいは各学校や市町村教育委員会の要請に応じて直接学校に出向いて、各教科の授業の指導に当たるなどの取組を行っております。こうしたことと併せて、日常的に学校訪問を行い教員を指導する立場にあるのは、市町村の教育委員会の指導主事でございますので、そういった市町村の指導主事とも十分連携する必要がございますので、年に3回、県内の市町村の指導主事を集める会議を開催しまして共通理解を図り、学校への指導内容に関しての助言を行うなどの取組を行っているところでございます。

内田委員

 先ほど小学校と中学校のそれぞれの対応、年齢が上がっていくに従っての対応について若干お伺いしたんですけれども、中学生になると特に数学とか物理とか、積み上げ式の難しい問題も増えてきて、受験の問題は更にもっと難しくなってくると思いますけれども、そういったことを受けて、思春期ということもありまして、学習意欲そのものをなくす生徒もかなり増えていくと思いますが、中学校では具体的にそういう生徒さんがいる教室とか、また学級内でどのように対応しているんでしょうか。

子ども教育支援課長

 中学校では特に、先ほどちょっとお話ししましたが、教科担任制ということがございます。したがって、小学校と比べると教科で子供を育てるという意識が強く働きますので、例えば先ほどちょっとお話ししました放課後とかあるいは夏休みの学習会などでは、ちょっと学習が遅れがちな子供に対しては、1人の教員ではなくて教科で順番に様々な教員がかかわって意欲を持たせたり、あるいは学年全体でチームをつくりまして、そういった中で例えば家庭訪問をしたりとか、そういった中で、あるいは各定期テストの結果などを見て、結果が落ちた子供については個別に声を掛けるなど、そういったきめ細かいような指導を重ねていると、そういう状況でございます。

内田委員

 確かな学力の向上について、最後に、この間本会議で道徳教育の推進については、私も強く要望させていただいたんですけれども、もう一方にこういったやっぱり公立高校の義務というか役割として、やはり基礎的な学力をしっかり身に付けさせる、これは永遠のテーマだと思うんですね。それなので、やはり難しい、あまり言葉は良くないんですけれども、落ちこぼれになってしまうと次々と進めなくて、最終的に受験のときに非常に困る、そういったことも周りを見ていると思いますけれども、やはり小学校の低学年から早い段階からしっかりとこういった基礎学力の向上というか、着実に何とかしていかなくてはならないと思いますけれども、こういった課題にどのように県としては取り組んでいくのかをお伺いしたいと思います。

子ども教育支援課長

 読み書き計算などのいわゆる基礎学力につきましては、小学校低学年からできるだけ早い時期に継続的に楽しく学ばせるということが大切でありまして、小学校6年間を通して学力の状況についてしっかりと把握し適切に指導していくことは、その後の中学校、高等学校への接続を考えると、極めて重要であると考えております。また小学校低学年から家庭学習の習慣を確立させるためには、各学校は適切な量の宿題を出していくと、こういった方策も必要でありますし、子供たちが理解することの楽しさを身に付けるためにも、こうした取組が広がるように働き掛けたいと思っております。小学校教育につきましては、6年間という大変長い期間で行うために、ややもすると低学年、中学年、高学年という短いスパンでとらえられがちでありまして、学校全体でどのように基礎学力を定着させていくかという、そういった視点が若干希薄になる傾向があるかなというふうに思っています。そこで、校長がリーダーシップを発揮して学校全体で組織的、継続的に基礎学力の定着に取り組むことは、今後ますます重要になると考えております。

 県教育委員会といたしましても、本県における低学年の学力を客観的に把握して、課題を分析した上で、早い段階からの改善を図るといったことで、小学校5年生、中学校2年生を対象に実施しております学習状況調査を、昨年度から小学校3年生にも導入して、県内の小学校低学年の学力の定着状況について継続的に把握に努めているところでございます。今後は、こうした調査結果も活用しながら、中学校、高等学校での確かな学力の基盤となる小学校における基礎学力の定着について、市町村教育委員会や校長会とも課題意識を共有して、しっかり取り組んでいきたいと考えております。

内田委員

 確かな学力の向上についての要望を申し上げます。

 学習指導要領の改正というちょうど良い機会が来ているため、今までの良い面は更に伸ばしていただきたいと思いますが、併せて、何度も言うようですけれども、本当に仕事に就いたときに本人が恥ずかしい思いをすることになります。そして、私も本当にびっくりするようなことがこの一、二年で何度もありました。大学生の方でもホワイトボードに字を書くときに違う字を堂々と書いていたりして、違うよと言うと、また違うのを書いたり、それの繰り返しだったりとか、あと、ちょっとした文章ですね、違う字を平気で書いても全然気が付かないというのを目の当たりにしまして、本当にびっくりしてしまったんですけれども、生きるために最低限必要な基礎知識それから学力、これをできれば県民の皆さん、お子さん全員に、県教育委員会として市町村教育委員会に対ししっかりと方向性を示して、連携を強化し、更なる基礎学力の向上にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 もう一つ、今年は横浜開港150周年ということですが、横浜ばかりではなくて神奈川県という県のイメージは、昔から港の近くでありまた海外貿易がなされていたということで、全県的に日本の中でも一、二位を争う国際的なイメージがある県だと私は思っております。よって、県内で生活をする子供たちには、是非この神奈川県の明るいイメージ、また国際的なイメージに負けないような海外の人たちと積極的にコミュニケーションをしていって国際社会に動じない人材を、是非たくさん育てていっていただきたいと思いますが、そのために特に学校教育の中では英語教育というものにもやはり力を入れるべきでありますし、これから更に求められるものだと思いますので、小・中・高校における英語教育について、何点かお伺いしたいと思います。

 平成23年度から小学校においても全面実施される新学習指導要領では、すべての学校で小学校の高学年に外国語活動が実施されると聞いておりますけれども、現在の小学校における導入状況についてお伺いします。

子ども教育支援課長

 お話にありましたように、今回の学習指導要領の改訂において新たに導入されました小学校の外国語活動につきましては、小学校5年生、6年生に年間35時間、週当たり1時間の授業時間が設定されております。これは平成23年度全面実施になりますが、今年度からの移行措置期間においては、各学校の裁量により授業時数を定めて実施することが可能となっております。

 お尋ねの導入状況でございますが、今年度、文部科学省が実施しました教育課程の編成・実施状況調査の結果によりますと、本県では平成21年度、県内861校すべての公立小学校で外国語活動の実施が計画されておりまして、年間の総授業時数の平均は5年生が25.2時間、6年生で24.4時間となっております。また、22年度には五、六年生ともに31.0時間が予定されておりまして、平成23年度から年間35時間行われる新学習指導要領の全面実施に向けて、計画的に授業時間数の増加が図られているところでございます。

 なお、今年度既に35時間以上実施を計画している学校が319校、37%ございまして、平成22年度は約6割の学校が35時間以上の授業の実施を予定しているといった状況でございます。

内田委員

 ちょうど小学校の外国語教育の導入に関しては、今までにないほどこれからどんどん進んでいくという、今までは外国語を取り入れるかどうかでさえ議論がされてきたわけですけれども、やはり国際的な見地に立って見ると、どうしても外国語を導入するということで、だんだん平成23年には35時間の学習指導要領の中に取り組まれるということで、方向性がはっきり見えてきたので、私も推進しやすいんですけれども、小学校については分かりました。実際には全面実施に向けて、どのような課題というものが今あるんでしょうか。

子ども教育支援課長

 先ほど導入の状況についてお話ししましたが、課題ということで申しますと、やはりこれまで総合的な学習の時間を中心に多くの学校が外国語活動に取り組んできたわけでございますが、授業の時間数や扱われる内容については、各学校まちまちでございまして、主に小学校5年生、6年生の担任が週1時間の外国語活動の授業を担当するということに対しては、不安視する声もございます。したがって、今後重要になるのは、教員が安心して授業を行えるように、年間活動の組織的な年間指導計画の作成であるとか研修であると思います。具体的には、県教育委員会ももちろん研修を行っているわけですが、それに加えまして市町村でも地区別や学校ごとに、教員の研修が盛んに行われておりまして、先進的な取組を学んだり、教員の英語力を向上するための研修を行っております。そういった授業の実際の研究と教員の研修を車の両輪にしながら、今後の中でいろいろ適切な指導が進められるように県教育委員会としても支援をしていきたいと考えているところでございます。

内田委員

 小学校においては確実というかこれからどんどん進んでいくので、その辺をしっかりと見守っていただき、次に中学校ではもともと英語教育がなされていますけれども、平成24年度から新学習指導要領が全面実施されるということですが、この新学習指導要領では、中学校の英語教育というものは、今までとどういうふうに違っていくのか、変わっていく部分についてお伺いします。

子ども教育支援課長

 今回の中学校の学習指導要領の改訂では、確かな学力の向上を図るという観点から、学習内容の充実が図られておりまして、すべての学年で年間の授業時間が105時間、これは週当たり3時間ですが、若しくは140時間、週当たり4時間ということで増加をしております。授業時間の増加に伴いまして、扱われる単語も900語から1,200語に増加をしております。またそれらの定着のために繰り返し学習を重視することも打ち出されております。またこれまでの知識、技能の習得に加えまして、例えば自分の気持ちや身の周りの出来事あるいは与えられたテーマについて、簡単なスピーチをするなどといった活動が取り入れられておりまして、英語を実際に使いながら学ぶということで、思考力や判断力を育成することがねらいとされております。教育委員会としても全面実施までの間に、この新学習指導要領の趣旨の周知に努めたいと考えております。

内田委員

 小学校、中学校と聞いてまいりましたが、次は県立高校についてなんですけれども、やはり社会人になる一歩前の段階としては、高校の英語というものはかなりハイレベルになってくると思います。平成24年度から全面実施される新学習指導要領における英語教育というものは、今までと違ってどのように変わっていくのでしょうか。

高校教育課長

 高等学校の教科外国語においては、現行の学習指導要領ですと、すべての生徒が卒業までに必ず学習しなければならない必須履修科目としまして、スピーキングとリスニングを主とするオーラルコミュニケーションT、またはリスニング、リーディング、スピーキング、ライティングの四つの能力をバランス良く学ぶ英語T、どちらかを最低1科目履修することになっております。今回改訂されました学習指導要領では、すべての生徒が卒業までに必ず履修する科目として、オーラルコミュニケーションTと英語Tを合わせましたコミュニケーション英語Tという科目が設定されまして、この1科目は必ず全員履修するということになっております。このコミュニケーション英語Tの具体的な指導に当たりましては、聞いたこと、読んだことを踏まえて、英語で話したり書いたりする英語活動を適切に取り入れるなど、四つの技能を関連付けて授業を展開する必要があると、このように考えております。

 なお新しい学習指導要領におきましては、英語の各科目の指導に当たっては、生徒が英語に触れる機会を充実させること、また授業を実際のコミュニケーションの場面とすることが強く求められておりまして、したがいまして授業の中では教員が英語をより多く用いることで、より実践的な英語能力を育成することが求められているということでございます。

 さらに、中学校における指導内容との円滑な接続を目的とした科目としまして、コミュニケーション英語基礎という科目が新たに設けられまして、これは学校、生徒の実態に応じまして、中学校における外国語、英語の指導内容の定着を図るための科目、この設置も可能になったということが新しい学習指導要領の特徴でございます。

内田委員

 もう一つは、そういった英語の教育の展開については、改訂もありますから、各小中学校で少しずつ進んでいくと思われますが、もう一つは国際感覚を身に付けるという重要な課題があります。例えば外国の高校生との交流とか、国際交流の実施状況について、県立高校ではどのようになっているのでしょうか。また教育委員会としては、どのように支援を行っているのでしょうか、お伺いします。

高校教育課長

 県立高校における国際交流の状況でございますけれども、平成20年度には25校の県立高校が海外の延べ47校の姉妹校と交流をして、相互の学校訪問、授業あるいは学校行事への参加、ホームステイ等を実施いたしました。この姉妹校交流を通しまして、直接外国の高校生やあるいは家族の方と触れ合う交流体験を通じまして、生徒の国際感覚を養っているところでございます。

 また、海外修学旅行につきましては、昨年度33校の学校が実施しまして、主に東アジアの国々へ参りまして、異文化理解に取り組んでおります。

 県教育委員会としましては、平成17年度から神奈川県友好交流地域高校生派遣事業を展開しまして、毎年県内の高校生8名、これはスピーチコンテストの優勝者とか非常に優秀な方8名を米国のメリーランド州に派遣しまして、現地のエレノア・ルーズベルト高校を訪問して、日本の文化の紹介あるいは家庭滞在などを通しまして、国際感覚の育成に取り組んでおります。またこういった生徒は、帰国後も各学校等で異文化体験を学校の中で披露したりするということもしております。

 またさらに、平成19年度から外務省が主催しております21世紀東アジア青少年大交流計画に協力しまして、中国、韓国から毎年100人単位の生徒を各県立高校で受け入れまして、交流会事業、部活動の参加等、アジアの高校生との交流の機会も設けているところでございます。この事業は日本人高校生の中国への派遣も行っておりまして、本県では平成20年度に44人の生徒を派遣し、交流活動を行いました。帰国後も現地の高校生との交流がまだ続いている生徒も多いというふうに伺っております。

 県教育委員会としては、今後も県立高校が実施する姉妹校交流の支援、高校生を海外へ派遣する国の事業に参加するなどして、様々な機会を積極的に活用して、国際交流を県立高校の中で推進していきたいと考えているところでございます。

内田委員

 今、中国へ44人と、今の時代は中国それから韓国、それからいろいろヨーロッパ、東アジア、いろんな語学があるんですけれども、やはり基本的には英語から始めるということがあると思いますが、先ほどコミュニケーション能力がある、スピーチコンテストで入賞した生徒さんが何人か選ばれて、国際交流の一端を担っているとお伺いしましたけれども、県立高校でコミュニケーション能力を養うためには、ちょっと今までやっていたような授業だと、どうしても身に付かないとか、あと好きな生徒はどんどん伸びるんですけれども、授業によってはまだ昔の読み書きというか、そのままセンテンスを訳すような昔ながらの授業のやり方をしている先生ももしかしたらいらっしゃるのかなと思いますけれども、実際問題、県立高校でそういったコミュニケーション能力を高めるような授業については、どのように取り組んでいくのでしょうか、また今取り組んでいるものがあれば教えてください。

高校教育課長

 現行の学習指導要領でも、実践的コミュニケーション能力の育成というのは強く求められておりますので、現在でもオーラルコミュニケーションT、あるいは英語Tの中で、実践的コミュニケーション能力の育成を目指した授業というのは、かなり進んでいることは事実でございます。

 具体的に申し上げますと、かつては英語の授業は講義形式の授業で、生徒が全然英語を発しない、和訳だけの授業あるいは文法中心の授業というのが主流でございましたが、現在は講義形式ばかりでなくて、生徒によるペアワーク、グループワークあるいは生徒が英語で発表するプレゼンテーション、あるいは生徒が主体的に英語の内容を聞き取ったり、自分の意見や考えが相手に伝わるよう英語で話す、あるいは英語で書く、こういった学習活動を必ず授業の中で展開すると、こういった授業が増えているところでございます。

 また、私ども教育委員会としましては、すべての県立高校にネイティブスピーカーの外国語指導助手を配置いたしまして、生徒の英語によるコミュニケーション能力の育成を目指した授業実践の推進をしております。

 また校内での英語スピーチコンテストを開いている学校もございますし、私どもの方でも神奈川県の高等学校英語スピーチコンテスト、先ほどもちょっと申し上げましたが、これも県立高校の参加者は年々増えているという状況でございます。

 また県立高校における国際教育、英語教育を推進するために、私ども研究校を19校指定しておりまして、姉妹校交流などを活用した工夫ある国際教育や、また2日間なり3日間なりで生徒にそういう場面を設定して、英語だけの生活をさせる、こういった取組をしている学校も多くございます。その成果をホームページ等を通じて各県立高校にも発信しているという状況でございます。

 概括としては、現状こういう状況でございます。

内田委員

 英語教育の充実についての要望を申し上げます。

 本県の英語教育についての取組について小・中・高とお聞きしましたけれども、よく分かりました。やはりこれから日本人が国際協力の精神に基づいて、広い視野から国際理解を深めて国際社会の平和と発展に貢献することが必要であると言われます。また最近、海外に旅行に行かれる御家族の方も非常に増えておりますし、昔に比べれば非常にインターナショナルということが身近に感じられる子供が多くなってきたのではないかと思いますので、やはり英語教育も、小学校においてはまだまだこれからという感じがいたしましたけれども、中学、高校においては、特に高校においては、コミュニケーション能力を早いうちから身に付けさせて、とにかく好きにさせるというのが一番だと思いますけれども、多方面から楽しみながら英語を学べるように、また受験英語も今ヒアリングとスピーチ、ヒアリングに変わってきましたけれども、その辺の授業の、先生の授業のやり方というものも、まだ研究の余地が残っていると思いますので、その辺の課題を整理して、今後とも力を付けていただきたいと思います。

 次に、特色ある県立高校づくりの一環として、平成19年度より取り組んでいる学力向上進学重点校については、10校指定ということで、今年度で3年目を迎え、来年3月までに成果を取りまとめて、今後これまでの取組について検討を進めていくと聞いております。そこで現状として、どのような取組成果が見られたのかということと、また今後の取組の方向性について、何点かお尋ねします。

 平成19年度に学力向上進学重点校を指定し、これまで2年間にわたり取組を進めてきたところであると思いますけれども、そもそもこの事業のねらいについて伺います。

高校教育課長

 近年、急速な社会の変化に対応した特色ある教育の展開、こういったものが求められているわけでございますけれども、その一方で学力問題の危ぐあるいは雇用産業構造の変容に伴う高校生の進路実現に向けた教育への関心の高まりから、これまで以上に確かな学力向上への取組、経済教育の充実が求められておりまして、こういったことを県立高校において力を入れてまいりました。その一環として、平成19年度より県立高校10校を学力向上進学重点校に指定して取り組んでおります。この事業のねらいとしましては、まず第一に生徒の個性と総合的な能力、才能の伸長を図りまして、生徒一人一人の進学希望を実現させることを目的に、学習指導、これは教員側の方でございますけれども、質的向上あるいは量的拡大、この両面に取り組んでいくことにございます。

 また第2としましては、キャリア教育を通じまして、生徒一人一人の豊かな人間性、社会性の育成など、キャリア諸能力の発達に取り組みながら、個々の進学目的の明確化など、進学指導の充実改善を図りまして、実践的な進学指導体制の確立を目指すことを目指してこの学力向上進学重点校の指定を始めたわけでございます。

 またこういった学校の取組が、他校へのモデルとなって、他の県立高校へ普及するということもねらっていたわけでございます。

 今年は研究指定から3年目を迎えまして、成果のまとめ、検証に向けて、現在取り組んでいるといった状況でございます。

内田委員

 今、進学重点校ということで10校ありますけれども、そこに学ぶ生徒に対して、学習指導面では、ほかの高校とは違う工夫とか、それから取組がなされてきたこととは思いますけれども、実際問題どのようなところに重点を置いて取り組んできたのでしょうか、お伺いします。

高校教育課長

 まず学力向上進学重点校では、入学者選抜におきまして、すべての科目ではございませんが、主に英語、数学、国語を中心に独自問題による学力検査、これを実施しているところでございます。当然、学習指導要領にのっとりまして、中学校で学習した内容を出題範囲としておりますけれども、特に国語、英語では長文問題や記述式の英作文問題、数学では証明問題を記述解答させるなど、全県の共通の学力検査に比べまして生徒の思考力、考える力、これを問う問題、やや難解な作問になるわけですけれども、作問を様々工夫しまして、生徒の学力到達度、意欲を測る、こういったことに努めているところでございます。この独自問題の導入によりまして、通常の入学後の定期考査、中間テストとか期末テストがございますけれども、このテストの作問に対する教員の意識の変化が見られまして、いわゆる知識の量を問うだけの問題がこれまで多く見られたんですけれども、そういう問題ばかりでなくて、やはり生徒が解答を導き出す、その解き方のプロセス、あるいは生徒が習得した知識を使った活用方法などの研究を通じまして、校内でのテストづくりや生徒の学習理解の方法等に関しまして、教員が意欲的に取り組みまして、より良い作問、こういったものを目指していこうということで、実際テストの質が上がったといいますか、こういう良い工夫、取組が見られるということが一つございます。

 また入学後の早い段階で、やはり生徒の学習への動機付け、学習習慣の確立、この初期指導が大事だということで、10校のうちの大半が入学後直ちに宿泊オリエンテーション、勉強合宿というような名前を付けている学校もございますけれども、そこで学習方法、学習に取り組む姿勢等について指導を行っているところが多くございます。また他の学校に比べまして、この10校は土曜日、長期休業期間中に講習を様々実施いたしまして、生徒の進学希望等に合わせた講習というものを充実させまして、またこの長期休業期間中にも勉強合宿を実施しているところもございます。

 このような様々な工夫や取組の中で、生徒の進学希望に対応する取組を行っていると、こういう実態でございます。

内田委員

 進学を重視する進学重点校では、次にキャリア教育や進学等に関する進路指導をどのように展開しているんでしょうか、お伺いします。

高校教育課長

 この学力向上進学重点校の各校でも、他の県立高校と同様に、生徒一人一人の望ましい勤労観、職業観、人間性、社会性を育成するために、平成20年度から各校ごとの指導計画に基づくキャリア教育を展開しております。とりわけこの進学重点校では、将来リーダーとして社会に貢献できる有為な人材を育成するために、様々な取組や機会をとらえまして、将来どう生きるのか、どのように生きたいのかを考えさせるとともに、大学等への進学の意義を深く理解させまして、将来の夢の実現に向けて自ら学習計画等を立てて取り組むよう、意識の醸成にも力を入れております。

 またキャリア教育に関する具体的な取組としましては、この進学重点校につきましては、伝統校がほとんどでございますので、これまで有為な人材を多数輩出しておりますので、この特性を生かしまして、著明な卒業生の方々等にも御協力をいただいたり、また進路先等で関係の深い大学、企業等も同窓生がたくさんいらっしゃるということで、そういう方々と連携、協力を図りながら、進路学習会や講演会、インターンシップや研修会、こういったものを実施しております。

 またそういった機会をとらえまして、生徒に自己理解、他者理解をはじめ、将来を考えた進路実現に向けたプロセス等の計画、課題の解決に向けた情報の収集、活用など、キャリア発達に向けた知識やスキルの習得に取り組んでいると、こういう状況でございます。

内田委員

 これまでの進学重点校の取組につきまして、今現在ではどのような課題があるのでしょうか。10校ということで、それぞれ学校の特徴もあるとは思われますが、進学重点校としてきたからには、いろんな課題が出てきているんではないかと思いますけれども、その課題認識のところをちょっと整理させていただきたいんですが、お願いいたします。

高校教育課長

 3年間ということで平成19年度から取り組んでまいりまして、今年度が最終年度で、来年3月に向けて、ちょうど19年度に入学した生徒がこれから進路実現に向けて、22年3月に卒業をするわけでございますので、そこでの一つの結果というのが、非常に重要なものと考えているところでございますが、これまでの2年半の取組を通じまして、学力向上の上から様々な学習の場や機会を設けまして、学習意欲の向上や学力の量的な充実に努めまして、また先ほど申し上げた教員のテスト作問あるいは授業づくり、さらには、進路指導体制の構築に向けて意識を高めて、改善に向けた実践的な動きが各校で明確になってきたということは、これは一定の成果としてとらえて整理をしておりますが、一方でやはり教員の教科指導力につきまして、どうしても受験指導に偏りがちになりますと、知識を深める量的な指導方法、これに偏りがちになってしまう傾向がございますので、教授の方法や学習内容の質的向上、これにこれまで以上に着目して改善していく、つまり授業の中で生徒にもっと考えさせる、生徒自らが知識を使って様々な課題に取り組む、こういったことができる生徒が非常に多く在籍していると考えておりますので、教員自身がもっと授業の改善を図っていかなくてはいけないと、こういうことが一つの課題だと考えております。いわゆる生徒が受け身で学習を日々しておりますと、これはやはり学力向上にはつながっていかないと考えておりますので、生徒一人一人の学習スタイルはそれぞれあるわけですけれども、そういうものをしっかりと確立させた上で、授業の中でもっと生徒自身が発表したり、あるいは先ほど申し上げたように考える、こういった授業を展開していくと、こういった指導が求められているということでございます。

 これを克服するために、校内あるいは指定校間、この10校の間で、教職員研修、これをもっと取り入れて、授業研究、公開授業、こういったものをもっともっと推進していく必要があるというふうに考えております。また生徒による授業評価をもっと有効に活用しまして、単なる評価で終わらずに、その評価を使って学校ぐるみ、教科ぐるみ、教職員総ぐるみで授業改善について話し合っていく、共通理解を得ていくということが大事であると考えております。

 また、ともすると受験指導とか進路指導にたけた教員に頼りがちになる傾向があるわけでございますけれども、特にこの進学重点校におきましては、共通理解、教員が同じ目的意識で共通理解を持って進路指導、キャリア教育に当たっていく、授業活動に当たっていくということが、やはり一番必要だと感じておりますので、そういったことを校長のリーダーシップの下にやっていくことが必要だと考えております。

 また各校の目標が、ちょっと今抽象的なものも見受けられますので、より明確にして、県民に分かりやすい目標を定めていくということも必要かと考えておりますので、今後もこの10校と教育委員会の方で連携して取り組んでまいりたいと考えております。

内田委員

 やはり、進学重点校10校ということで、前にちょっと調べたときは川崎市内が1校、横浜市内が4校、その他が5校ということで今10校、これは指定されて3年間ということで、もうすぐ今年度を経て終了とお聞きしましたけれども、今後この指定校については、例えばもっと増やすのかとか、いろんな考え方があるとは思いますけれども、この学力向上進学重点校の今後の方向性について、いま一度、どのように考えているのかお伺いしたいと思います。

高校教育課長

 委員御指摘のとおり、今現在10校で3年目を迎えたわけでございますが、この10校以外の学校でも、こういった進学重点校での取組を背景にといいますか、またその学校独自の伝統等で、大学進学希望者が非常に多くて進学実績も高い県立高校がほかにも当然ございまして、進学重点校を目指して授業改善の取組、補習、補講についての組織的な取組、こういったものに積極的に取り組んでいるという学校も増えているという現状がございます。こうした学校におきましても、卒業生や地域から非常に期待感が強いということもございまして、新たな進学重点校として地域バランス、あるいは進学実績等を勘案しながら、主体的、積極的に取り組んでもらう学校を進学重点校として、また新たに指定をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。もちろん現在の10校につきましても、これまでの成果、課題等を整理した上で、基本的にはまた更に継続をして、県立高校全体のレベルアップにつなげていきたいと考えているところでございます。

 これにはもっと教育委員会の方も支援が必要だと考えておりますので、指導主事が積極的に訪問して、教育課程についての指導や助言を行ったりするなどして、今後も発展的な学力向上に取り組んでいきたいと考えております。

内田委員

 この件の要望について申し上げます。

 やはり高校改革においていろんなタイプの高校ができ、こういった進学重点校も一つの特色であると思いますし、昔からの伝統校が多いということを聞きまして、やはりこの良き伝統ある高校も更に磨きをかけて、神奈川県全体の高校の良さというものを考えていただきたいと思います。

 まずは3年間の取組の成果をまとめて、各校がしっかり検証して、県民に分かりやすい明確な目標をお伝えするということでしたけれども、まだまだいろんな高校がありますが、進学重点校になり得るような学校については、是非やる気を全体で起こしていただいて、一層、教育の質的向上を目指していただきたいと思います。また進路実現に対して、そういった県教育委員会の大きな役割があると思いますので、是非この学校づくりの推進の一環として考えていただきたいと思います。

 次は、先日25日の本会議の一般質問でも申し上げたところではございますけれども、そのときは道徳教育の推進について、いろいろ教育長をはじめ知事にはお伺いしましたけれども、やはりいじめや不登校の問題がもっとも深刻な課題ではないかと、私は考えております。そこで、いじめの問題を中心に、本県の状況や取組等について、何点かお伺いします。

 まず本県におけるいじめと不登校の現状について、お伺いします。

子ども教育支援課児童生徒指導室長

 まず、いじめについてでございますけれども、文部科学省では平成18年度から、いじめの定義を変更いたしまして、従前の「自分より弱い者へ」、また「継続的」、「深刻な」という言葉を定義から削除するとともに、児童・生徒がいじめと感じればいじめとしてカウントするなど、よりいじめられた児童・生徒の側に立って把握するようになっております。このような定義の変更があった中で、本県の公立小・中・高等学校、特別支援学校におけるいじめの件数の推移でございますが、平成17年度は総計2,019件でございました。平成18年度は定義の変更があった関係で、5,580件と急増しております。また、19年度は4,221件と減少をしております。また校種別では、中学校が最も多く、学年別では中学1年生が最も多くなっております。

 次に不登校の状況でございますが、8月に公表いたしました平成20年度の調査結果速報値では、公立小・中学校の不登校児童・生徒は、10,039人となっておりまして、前年度から若干減少をしております。また学年別では、小学校1年生から学年が上がるにつれて、不登校児童・生徒は増えておりまして、中学3年生が最も多くなっております。なお公立小・中学校の不登校児童・生徒の総数、これは4年ぶりに減少をしておりますけれども、依然として1万人を超える不登校児童・生徒がおりまして、このことは大きな課題であるというふうに考えております。

内田委員

 今10,039人という、そういった実数というものが一応上がってきてはいるんですけれども、いじめ自体が原因で不登校になってしまったという子供もいるんではないかと思われますけれども、その辺はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

子ども教育支援課児童生徒指導室長

 いじめが原因での不登校というお話でございますが、不登校となったきっかけと考えられる状況の中で、学校生活に起因するいじめでございますが、小学校で66人、中学校では449人となっておりまして、合計で515人と、割合としては5.1%となっております。きっかけの中でいじめは、この数値から、それほど高い割合とはなっておりませんけれども、現に500人を超える児童・生徒がいじめをきっかけとして不登校になっているという状況は看過できないものと考えております。

内田委員

 決してこれは数字は5.5%で上がってきているとは思うんですが、いろんな要因が絡んできて、例えばちょっといじめられたということで、具合が悪いと親には言ったとか、そっちの方にカウントされる可能性もあるし、いろんな数え方もあると思うんで、一概に言えないと思うんですけれども、いじめの質自体が、今変わってきているのではないかなと思います。ネットで、例えば陰の方で当事者だと思われないようにいじめてたりとか、いじめの質自体が変化していると思われますけれども、県としてはどのように認識しているのか、その辺分かっているところで構わないので、教えてください。

子ども教育支援課児童生徒指導室長

 いじめでございますが、いじめというのは、いじめられている被害者、またいじめている加害者、そしてその外側にいじめをおもしろがってはやし立てる観衆、さらにいじめを見て見ぬふりをするという傍観者の4層構造があるとされていますけれども、最近のいじめの特徴といたしましては、小集団やグループの中でのいじめが増えていることが挙げられております。具体的には、外からはグループ内における遊びやゲームに見えるようにカモフラージュをいたしまして、でも実は遊びの延長として、一方的に攻撃をしているなど、ひどいいじめが行われているといったケースがございます。また従来のいじめでは、集団の中で弱い立場にある者が被害者になるという傾向でございましたけれども、最近では今までいじめっ子だった者がいじめられるようになるなど、被害者、加害者が入れ替わるのも特徴でございまして、だれもがいじめの対象となる可能性がございます。さらに、委員からお話がありましたように、携帯電話の普及とともに、インターネット上でひぼう中傷をするいわゆるネットいじめが増加しております。調査結果からは、パソコンや携帯電話などでひぼう中傷や嫌なことをされるという項目に、平成19年度、小・中・高合わせまして376件がありまして、前年度と比べ約3割増加をしております。

 このように最近のいじめは、教員など周りの人間からは気付きにくいタイプのものや、陰湿化したものが多くなっております。

内田委員

 そのネットの問題はだれか言わない限り、本人が言わない限り、なかなか分からない。ましてや御両親の方では分からない。そういったことで大事なのは、学校内で教師がそれを見付けるというか、気付かなくてはいけないと思うんですよ。ただ教師にしてみれば、ほかの業務も忙しいですし、気付きがあるかどうかも教師によって個人差が、私はあると思っているんですけれども、このような中で、いじめの実態をより把握するためには、教員の皆さんはどのようなことをしているのか、そういうことを具体的にお伺いしたいと思います。

子ども教育支援課児童生徒指導室長

 いじめ問題でございますけれども、平成18年度にいじめによる自殺というのが結構全国的に出てきております。そこで文部科学省では、いじめの早期発見に向けた取組の必要性が大切だということで、チェックポイントを示した上で、各学校や市町村教育委員会における取組についての総点検を実施をしております。文部科学省の総点検は18年度のみでございましたけれども、本県ではそれ以降も毎年度、県内すべての学校及び市町村教育委員会における取組の点検調査を、県独自に実施をしております。

 その調査結果によりますと、各学校において聞き取り調査やアンケート調査などによる把握ですとか、悩みや要望を積極的に受け止めることができるような教育相談体制の整備に十分取り組んでいると回答する割合が年々上昇してきておりまして、各学校ではいじめはどの子にも、どの学校においても起こり得るものであるということを十分に認識し、より一層の実態把握に努めているというふうに考えています。

内田委員

 先ほども申し上げましたけれども、教員の観察力と気付く力、それから指導力、クラスの中で、まずはいじめはいけないということをちゃんと言えるような教師でないといけないと思いますし、その質的なことも問われていると思いますが、その辺のところはどうお考えでしょうか。

子ども教育支援課児童生徒指導室長

 委員お話しのとおり、いじめの解消に向けましては、個々の教員がアンテナを高く張り、いじめの徴候をいち早く把握して迅速に対応する必要があるというふうに考えておりますが、対応状況に差があるということも事実であるというふうに考えております。

 このようなことから教員のスキルアップという面もございますが、総合教育センターではいじめ問題への対応研修講座を開催をいたしまして、いじめ問題の現状や予防的取組を含めた具体的な対応策についての理解を深め、指導力の向上を図っているところでございます。

 また教師のためのカウンセリングスキル向上研修講座におきましては、児童・生徒の主体性を高める心理的援助の手法など、学校での実践に役立つ研修を行っております。さらに、教員が定期的に受講する基本研修において配付される資料集におきまして、いじめ問題の対応について学校自体が、いじめは自分の学校にもある、見えにくく隠れているいじめこそ大きな問題につながりやすいという視点から、指導のポイントをまとめ、その周知に努めております。

 また各学校では気になる子供の事例を持ち寄ったケース会議というのを、定期的に行っておりますので、今後もそのような校内組織がより効果的に活用されるよう、様々な機会を通して推進に努めてまいりたいと考えております。

内田委員

 これはよくある質問で申し訳ないんですけれども、いじめで心に傷を付けてしまったようなひきこもりというか、長期にわたって学校自体を休んでしまった子供に対しては、学校としてはどのような支援を、いろいろ行っているとは思いますけれども、主に段階を踏んで行っているとは思いますけれども、その辺のところをお聞かせください。

子ども教育支援課児童生徒指導室長

 まず、いじめに対する学校の対応でございますけれども、学校ではまずいじめの事実関係をできる限り明らかにした上で、いじめた子供への指導を行いまして、それに即して家庭でも指導、必要に応じていじめられた側への謝罪等の対応を行うようお願いをしております。そのような対応をしても、残念ながらいじめられて学校を休んでしまった子供に対しましては、学級担任が家庭訪問などによりまして、よく話を聞き気持ちを受け止めるなどして関係を維持しますとともに、学校の指導経過や加害者側の様子を伝えながら、子供が安心して学校生活を送れる環境づくりを進めてまいります。それとともに心理の専門家であるスクールカウンセラーがカウンセリングを行うなど、教育相談コーディネーターを中心とした支援チームをつくり、いじめを受けた子供の心のケアに努めております。

 さらに子供が、例えば学級担任と会えないというような状況にある場合には、保護者との連携を密にして、家庭にいる子供の状況把握に努めております。また残念ながら学校への拒絶反応が大きいというような場合には、専門的な助言を得られる相談機関を紹介をしたり、各市町村に設置されております教育支援センター、いわゆる適応指導教室やフリースクール等を紹介をするということもございます。このようなケースでも、学校は児童・生徒との関係を絶やさないように、関係機関との連携に努め、学校生活再開のタイミングを逃さないようにすることが大切であるというふうに考えております。

内田委員

 結局、人として社会生活を営む中で最も大切なことは、基盤となっている人を敬う心とか愛する心とか、そういったものはやっぱり道徳教育だと私は考えておりますけれども、先日もそのことについて何回か質問をさせていただきましたけれども、豊かな人間性や社会性をはぐくむために、このいじめとの関連性で何か取り組んでいることはあるのでしょうか、お伺いします。

子ども教育支援課児童生徒指導室長

 豊かな人間関係や社会性をはぐくむことにつきましては、日ごろは各学校におきまして、高齢者との交流活動の実施などの様々な体験活動ですとか、地域清掃の実施などの奉仕活動、日々の班活動の実施など、多くの教育活動を通じて取り組んでいるところでございます。

 またこれ以外には、県教育委員会におきまして、児童・生徒のコミュニケーション能力を高めるため、今年度、児童・生徒を対象とした仲間づくり教室というのを、小学校50回、中学校24回、計74回実施をする予定でございます。この仲間づくり教室は、ワークショップ形式で子供たちが体験をしながらコミュニケーションスキルを学ぶというものでございまして、心理の専門家である臨床心理士にプログラムの作成や講師を依頼をして実施をしております。

 さらに相手を思いやる心や豊かな人間性、社会性の育成を目的とした小中学校の教員を対象といたしました「絆」づくり推進事業研修講座を、県内6教育事務所単位で年2回ずつ、合計12回開催をしておりまして、参加した教員が、この研修で習得したエクササイズを所属校に持ち帰りまして実践をすることで、児童・生徒のコミュニケーション能力の向上に努めているところでございます。

 県教育委員会といたしましては、このような取組を様々に実施することで、子供たちに思いやりの心をはぐくみ、いじめなどの解消に結び付けていきたいというふうに考えております。

内田委員

 このいじめ、不登校の関係について、要望を申し上げます。

 いじめとか不登校に関しましては昔からある問題ですし、一朝一夕で解決するのは難しいとは思いますけれども、やはり教師が演壇に立って、まず4月のオリエンテーションでも何でもいいですから、まずそういうことはいけないということと、そういう道徳教育の一環でもいいですから、ともかく仲間を大切にすることをまず前提に徹底すること、それからもう一つは、もしいじめられている子がいるんであれば、教師としてはできるだけ気付くということに、今までのままではなくて、まずそういうことも必要だと思うんですね。それで1人の生徒が立ち直ったりするわけでありますから、そういった教師の側もいろんな観察力がこれからは求められてくると思います。この2点をしっかり見極めて、いじめや、また1万人を超えてしまっている不登校に対して、是非少しでも数が減っていくように努力をしていただきたいと思います。

 学校教育を中心となって支えているのは、やはり教員であるということを今申し上げましたけれども、より良い学校教育の実現には、やはり質的にもまた人間的にも優れた教員人材を確保していく、これが県としての教育委員会としては重要な課題と、私は考えております。

 本会議の方で我が会派の小川議員の代表質問でもございましたけれども、既に教員の大量退職時代に入っていまして、今後多くの教員を採用していかなければならないという状況を私どもも認識しております。そこで教員の人材の確保の問題について、お伺いしたいと思います。

 まず基本的なこととして、教員採用に当たって、その募集数というものはどのようにして決めているのか、お伺いします。

教職員人材担当課長

 教員採用に当たっての募集数の決定ということでございますけれども、募集数の決定に当たりましては、まず採用年度におけます教員定数を見込む必要がございます。この教員定数は、公立の学校の場合では、小中学校、高等学校及び特別支援学校等もいわゆる標準法、これは小中で言いますと、公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律というものでございますけれども、この標準法によりまして、毎年度の児童・生徒数及び学級数の数を見込んでおります。

 説明をちょっと分かりやすくするために、来年の例ということでお話しさせていただきますと、来年度のまず児童・生徒数の見込みを基に、この教員の定数を算定をいたします。そうしまして、実際に今いる正規教員の数、それと来年の3月にどのくらいの教員が退職していくであろうかと、その時点での学校種、教科、科目におけます過不足の状況、それとあと退職された方々で再度教壇に再任用職員ということで立たれる方々もいらっしゃいますので、そういった再任用職員の見通し等々、単年度の要因といたしましては、今申し上げましたようなことを踏まえながら募集数を算定していっております。

 ただ、一回採用ということになりますと、長い方では30年、40年と現場に立っていただくようになりますので、長期的な視点から将来的な児童・生徒数の動向の見通しですとか、あるいは年齢構成のバランスを考慮しながら最終的な募集数を決定する、そのような仕方をしております。

内田委員

 では、子供たちの数と教員の数の動向について、どのような状況になっているか、お伺いします。

教職員人材担当課長

 政令市を含む本県全体の児童・生徒数の動向でございますけれども、小学校につきましては昭和56年度をピークとして平成12年度まで、年々減少を続けてまいりましたが、13年度から増加に転じております。中学校、高等学校、特別支援学校につきまして、同様に増加の傾向にございまして、中学校においては17年度から、高等学校においては20年度から増加傾向にございます。一方、特別支援学校につきましては、これまで一貫して増加傾向にございまして、今現在、県内の公立学校には学校基本調査に基づく数字で、約80万人の児童・生徒数が在籍しております。

 一方、教員定数につきましては、児童・生徒数の増加に伴いまして漸増傾向にございまして、21年度の条例定数ということで申し上げますと、全校種合わせて5万1,000人程度となっております。今後の教職員定数につきましては、児童・生徒数が、小学校ではここ一、二年でまた減少に転ずることが見込まれておりますけれども、中学校、高等学校ではもうしばらく増加が続き、また特別支援学校でも増加が見込まれますので、ここ5年間程度のスパンで申し上げますと、総体では微増という傾向かなというふうに見ております。なお、その分につきましては、中学校、高等学校においても、生徒数が順繰りに減少に転じていくことが見込まれておりますので、教員定数といたしましては、ほぼ横ばい、ないしは減少の見込みというふうに考えております。

内田委員

 全体としては、ここ5年間では微増かほぼ横ばいという感じではありますが、大量退職者が出ているために教員の数が減っている場合には、課題があるということが言えますけれども、退職者数にかかわる動向についても、お伺いします。

教職員人材担当課長

 これも政令市を含む本県全校種における退職者数の状況でございますけれども、平成19年度以降、定年や自己都合などにより、毎年2,000人を超える教職員が退職をしております。今後も当面の間、毎年度二千四、五百人程度の退職者が出ると見込んでおります。

内田委員

 多分この退職の時期というのは、他の県も同じようなことだと私は認識しておりますけれども、今後の教員人材の確保に当たって、課題は何だと考えておりますでしょうか。

教職員人材担当課長

 教員採用試験におきましては、退職者数の増加に伴いまして、近年募集数を増やしてきている状況にございますけれども、大量退職につきましては、今後とも引き続いていくという見通しでございます。そういった中では、退職者数に見合う教員の数をきちっと確保していくというのが、一つには大きな課題というふうに考えております。

 一方、この教員の大量退職というのは、都市圏においては共通の課題というふうになっておりまして、近隣の東京都、千葉、埼玉両県におきましても、近年におきましては採用数を増やしてきているという状況にございます。その結果、受験競争倍率におきましては、低下傾向がございまして、特に小学校につきましては、厳しい状況にございます。平成20年度実施試験ということで申し上げますと、中学校が5.4倍、県立高校が6.4倍、特別支援学校については4.9倍という中で、小学校につきましては2.6倍という状況になっております。競争倍率が余り低下してしまうということになりますと、優れた人材の確保ということでは、非常に難しい状況となってまいりまして、質の低下が懸念されるところでございます。

内田委員

 今、小学校は倍率的に2.6倍ということで、教師の質的な問題とかいろいろ考えなくてはいけない中で、やはりそういったところで、人材の確保が全体として難しくなっていくということが見込まれます。これまでは、そのようなことに対して、どのような取組をまず始めてきたのか、お伺いいたします。

教職員人材担当課長

 本県の教員採用試験で、新卒者だけに頼る従前の採用方法では人材の確保が年々難しくなるというような状況の中で、これまで多様な人材と教員としての即戦力人材の確保ということに努めてまいりました。具体の内容といたしましては、平成12年度から、教員採用試験において多様な人材の確保という意味合いでは、民間企業経験者等の確保に向けた受験年齢の引上げとか、社会人特別選考として、民間企業や官公庁等での勤務経験者を対象としました特別選考の実施、あるいは英語資格者や芸術、スポーツの世界での実績をお持ちの方々を対象とした特別選考の実施などに取り組んできたところでございます。

 また即戦力の人材といたしましては、公立学校での正規教員ですとか臨時的任用職員としての経験をお持ちの方を対象としました特別選考を導入、実施しております。さらに、小学校区分におきましては、大学推薦による選考というのを、これは全国に先駆けて本県では実施しているところでございます。さらに、こうした取組のほか、教員採用試験におきます受験者の確保に向けた広報活動の強化策といたしまして、全国の大学での説明会の実施ですとか、インターネットによる受験申込みの実施等々にも取り組んでおります。

 さらに、大学生などの教員志望者を対象に、本県の教育への理解とともに、実践的な力を付けていただき、神奈川の教員採用試験にチャレンジしてもらおうという趣旨で、20年度からでございますけれども、かながわティーチャーズカレッジを始めたところでございます。

内田委員

 特別選考枠ということで、枠がかなり広がってきていて、いいことだと思います。その中で特に私は社会人を対象にした特別選考、これについて聞きたいんですけれども、その制度の内容と採用実績についてお尋ねします。

教職員人材担当課長

 社会人経験者特別選考は、多様な人材の確保の観点から、社会人にも広く教員採用の門戸を開こうということで、平成19年度の教員採用試験から導入、実施しております。受験資格といたしましては、教員採用試験を受験する年度の前年度までの直近7年間において、民間企業等で5年間の勤務経験を有する方々を対象としておりまして、受験年齢も、広くチャレンジしていただけるよう、60歳未満としております。実績ということで申し上げますと、平成20年度採用では12名、21年度採用では17名の方々が採用となっております。

内田委員

 それはまだこれから検証がなされていくと思いますが、最後に教員の大量退職がまだまだ続くという見込みの中で、今後の教員人材の確保に向けて、県教育委員会としてはどのように取り組んでいくつもりなのか、お伺いします。

教職員人材担当課長

 これまでは神奈川県の教員採用試験では、受験年齢の引上げですとか特別選考制度の導入など、段階的な教員採用試験の改善を行いまして、広く多様な人材あるいは即戦力の人材を確保するような取組を進めてまいりました。今後におきましては、人材の確保が一層厳しくなる見込みの中で、これまでよりも更に踏み込んだ対策が必要というふうに考えております。こうしたことから、現在、今後大量に発生する退職人材の方々、中には非常に優れた指導力等々をお持ちの方々もいらっしゃいますので、そういった方々の経験なり能力を生かしていただくという意味合いから、再度学校で活躍していただけるような仕組みづくりですとか、あるいは近年、市町村教育委員会におきましては、教師塾というような教員養成の取組が進められてきているところでございますけれども、そういったところと連携をした中での優れた人材の確保をしていくための仕組みづくり、さらには学校現場では、臨時的任用職員という形で既に教壇に立っておられまして力を付けている方々が多くいらっしゃいます。そういった優れた人材として評価される方々につきましては、既存の特別選考とは別に、積極的に正規教員に登用していくような仕組みづくり等々を対策としてつくっていきたいというふうに思っておりまして、現在その検討を行っているところでございます。

内田委員

 この教員の確保についての要望を申し上げます。

 やはり大量退職の問題が大きいと思いますので、その時期はほかの県も同じだと思いますから、より人材確保というものが課題になってくると思いますが、都市圏の中で確保競争が厳しさを増す中で、神奈川県としてはどういう教員を重視して、どういう人材を確保していくのか、そういうところをしっかりと話し合って、より優秀で今後も役立つ教員の確保に努めていただきたいと思います。

 次に、先日、「武家の古都・鎌倉」の世界遺産登録に向けて、国内外の専門家を招いた第2回国際会議が開催されましたけれど、その一環として市民、県民を対象としたフォーラムが開催され、このフォーラムには我が会派の新堀議員も出席されていらっしゃったと思いますけれども、多くの市民、県民が参加されて、世界遺産登録に向けた熱意を肌で感じたということでした。我が会派としても鎌倉の世界遺産登録に向けて、何らかの形で動きを止めないでいきたいと思っております。そうしたことも加えまして、鎌倉の世界遺産登録に向けた現在の取組状況について、何点か少しですがお伺いします。

 まず世界遺産登録の意義ですけれども、平成4年に暫定リストに掲載されて以来、地元が中心となって登録に向けた準備を進めてきたと承知はしておりますけれども、その意義というものはどこにあるのか、まず確認させてください。

文化財・世界遺産登録推進担当課長

 武家の古都・鎌倉の世界遺産登録の意義でございますが、我が国は1992年、平成4年に批准した世界遺産条約に掲げておりますとおり、世界的に顕著で普遍的な価値を有する遺産を人類共通の遺産として確実に次の世代に保護し継承していくことにあると考えております。その意味で、鎌倉には市民をはじめ多くの人たちによって今日まで守られてきた武家文化、この武家文化につきましては、鎌倉で発祥し江戸時代までの約700年間にわたってはぐくまれ、今日の私たち日本人の思想等の基礎をなしている文化と、このようにとらえておりますが、鎌倉にはこの武家文化の源流を示す神社や仏閣など多くの遺産や、またこの文化をはぐくんできた歴史的な風土が、今日まで良好な状態で守られております。これらの大切な遺産を人類共通の遺産として世界に発信しまして、確実に次の世代に伝えていくことこそが、鎌倉の世界遺産登録の最大の意義と考えております。

内田委員

 神奈川県の中で鎌倉といえば、やはりすごく人気の場所でありますが、世界遺産の数が多くなったということもあって、登録の審査というものがますます厳しくなっていると聞いておりますけれども、登録に向けてはどのような手順を踏んで、どういった課題をクリアしなければならないのでしょうか、お伺いいたします。

文化財・世界遺産登録推進担当課長

 はじめに登録までの手順でございますけれども、現在、文化庁が各候補自治体に示している流れで御説明いたします。

 まず登録に向けましては、まず国が世界遺産暫定一覧表を作成いたしまして、これをユネスコ世界遺産委員会へ提出する必要がございます。鎌倉につきましては、先ほど委員のお話にもありましたように、既に平成4年にこの条件はクリアしております。これを受けまして、地元自治体が史跡の指定など登録候補資産整備、その資産の保存管理計画の作成、あるいは国がユネスコに提出する推薦書の原案の作成、こうしたものを進めていく準備を進めていく必要がございます。これらの準備が整った地元自治体が、ただいま申し上げた推薦書の原案等を国へ提出し、この原案を基に国が推薦書を作成した後、ユネスコ世界遺産委員会に提出し審査を受ける、こういった運びになります。

 しかしながら、現在、委員御指摘のとおり、ユネスコ世界遺産委員会における審査の厳格化が進んでおりまして、確実な登録に向けては、その遺産が真に世界的な価値を持って未来に残すべきものであるということを分かりやすく説明していくことが求められております。こうした中で、鎌倉につきましては、推薦書の基礎となる資料を作成するなど、地元自治体としてはなすべき準備が整ったと考えておりますけれども、早期かつ確実な登録に向けましては、武家文化の価値をより簡潔に分かりやすく説明できるよう推薦書を仕上げていく、こうしたことが課題であると認識しているところでございます。

内田委員

 推薦書については後でお伺いしますけれども、結局この夏に開かれた第2回国際会議で国際的な評価を高めることを目的に開催をしたということですけれども、この会議の中で、国内外の専門家の方々からは、どのような評価とか意見を頂いたのでしょうか、お伺いします。

文化財・世界遺産登録推進担当課長

 国際会議に御出席いただいた国内外の専門家の方々は、1月に開催した第1回国際会議のメンバーと同じ方々でございまして、前回の御指摘を踏まえて、改めて作成した推薦書の原案、私どもが作成した原案でございますが、これに対して御意見、評価を頂きまして、その熟度を計ることを目的に開催したものでございます。会議は視察、意見交換、市民、県民を対象とした国際フォーラムといった日程で、7月30日から4日間の構成で実施いたしましたが、この期間を通じまして、御意見といたしましては、鎌倉には武家文化の源流を示す多くの史跡や歴史的風土が、長年にわたる市民のグループにより、良好な状態で今日までしっかりと保存されており、世界遺産に登録される可能性は十分にある、こうした高い評価を頂いたところでございます。ただその一方で、確実な登録につきましては、武家文化の価値をより分かりやすく説明するとともに、推薦書に記載する構成資産につきましては、そのことを確実に証明できるものに絞り込んだ方が良いのではないか、あるいは武家文化をはぐくみ歴史的風土として良好に保存されている鎌倉の山りょう部、これをより積極的に評価すべきではないか、こうした課題も提起されたところでございます。

内田委員

 海外の専門家の方々から貴重な評価と、高い評価とそれから逆に課題の両方を頂いたということですが、登録の実現に向けては、それらの意見を真しに受け止めて、どのようにしたら早くできるかということと、また、どのような取組を今後していくのかということ、2点お伺いします。

文化財・世界遺産登録推進担当課長

 今後の取組でございますけれども、早期かつ確実な登録に向けましては、委員の御指摘のとおり、先の国際会議等において提起された課題を解決していくことが大変重要と考えております。ただこれらの課題は、登録をより確実にするためにという観点での御指摘でございまして、その解決に向けましては、世界遺産委員会の動向や推薦に当たっての専門的、技術的な状況を詳細に把握している国に、これまで以上に推薦書の作成等に積極的にかかわっていただく必要があると考えております。そこで4県市を代表いたしまして、知事並びに鎌倉市長が登録推薦の責任者である文化庁長官に対しまして、武家の古都・鎌倉の早期かつ確実な登録に向けて、これまで以上に国と4県市が連携を深め、国際会議等で提起された課題の解決も含めて、推薦書を仕上げていくための作業を共同で進めていくと、このようなことにつきまして要請する予定でございまして、現在、具体の日程等の調整を進めさせていただいているところでございます。

内田委員

 そういった推薦書をつくっていただくということは、一番手っ取り早いというか、世界遺産登録に向けて一歩前進するということになると思いますけれども、実際問題、例えば世界遺産に登録された場合、観光地として有名になるでしょうし、そういったことで今後の鎌倉の世界遺産を守っていくための仕組みについて、何か動きとか考えは見られるんでしょうか。

文化財・世界遺産登録推進担当課長

 お話のとおり、武家の古都・鎌倉の世界遺産登録の最大の意義といいますのは、登録された遺産を確実に次の世代に保護、継承していくことにあると考えています。そうした観点から、今回の国際会議におきましても、専門家の方々から、個々の候補資産に係る保存管理計画を我々から提示したところでございますが、これについてはしっかりと作成されているという高い評価を頂いたところです。その一方で、気候変動や地震から資産を守るという観点を加えてはどうかとか、あるいは遺産全体を確実に保護継承する仕組みとして、所有者や市民を加えた地域ぐるみの組織を創設してはどうかといった御意見も頂きました。また委員御指摘のとおり、国内外からの観光客の増加に対応するためには、遺産に悪影響を与えないようなスムーズなアクセスや適切な誘導を図るための交通システムの整備、あるいは市民レベルのボランティアガイドの育成、このほか来訪者に対しまして、武家の古都・鎌倉の価値を正しく理解していただくための情報の発信、それから次代を担う子供たちへの教育も含めて、世界遺産鎌倉を守るという、こういった市民意識、県民意識の醸成、こうしたことを進める必要があるといった御意見も頂いたところでございます。

 そこで、今後はこうした意見をどう具体化し、確実な登録に結び付けていくのかにつきまして、4県市と文化庁が共同し、また現在鎌倉市におきまして、市民レベルで普及活動を進めています鎌倉世界遺産登録推進協議会、こうした協議会とも連携しながら、研究を進めてまいりたいと考えております。

内田委員

 武家の古都・鎌倉の世界遺産登録に向けた取組について、要望を申し上げます。

 私が手元に持っているこのような世界遺産登録を目指しているような新しいパンフレットもできたぐらい、力を入れていると理解しました。是非確実に推薦書をちゃんとしたものを出していただいて、今後この神奈川県の中で鎌倉というものがどんなに伝統があり、武家文化が輝いたところかということを、私たち県民も一緒になって、登録に向けて応援していき、是非県としても、そのことを推進していただきたいと思います。

 私の質問は、今日はこれで終わります。

 

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